明編 自慢の子供達

新暦〇〇二八年九月三日。




マンティアンであるめいは、孤高のハンターだ。俺の下を巣立っていった時も、それこそ挨拶一つなかった。だけどそれがまたあいつらしくていい。


兄弟姉妹の中では特にひかりと仲が良くて、彼女に絵本の読み聞かせをしてもらったりもしてて、それは巣立ってからもしばらく続いてたんだが、いつしかそんな姿も見られなくなっていった。


というのも、どうやらその頃に、後につがいとなるかくと出逢っていたようだ。


ただし、マンティアンの<出逢い>というやつは、決してロマンティックなものじゃない。それはむしろ、命の危険そのものでもある。


なにしろマンティアンは共食いをする。それは、相手が同性だろうが異性だろうが関係ない。


むしろ、簡単に殺されて食われてしまうような相手などお呼びじゃないと言わんばかりに戦って、相手が負ければそれを食う。


つまり、お互いに相手に自分の強さを見せつけて認めさせて初めて<番候補>になれるということだ。


俺達のところで育ってよく生き延びられるほどの強さを身に付けたものだと思ったりもしたが、それはやはり、母親であるじんの教育の賜物であったようだ。


しかも、じんの場合は、自分が足元にも及ばない強さを持つエレクシアと一緒にいて、彼女のことをすぐそばで見てきたことで、効率的な体の使い方を学んだというのもあったのかもしれない。


いずれにせよ、シビアな野生の中でもとりわけ恐ろしくシビアなマンティアンの世界で生き延びられていることが、めい、そしてじょうの能力の高さを表してると思う。


……と言いつつ、実はドローンとかで援護したことも一度や二度じゃないんだが……


まあその辺は、<親心>ということで一つ。


そして、俺達の<群れ>の中で育ったことが影響しているのか、めいじょうも、<共食い>はしなかった。加えて、パパニアンやパルディアも襲わなかった。


ボクサー竜ボクサーは獲物にすることもあるが、幸い、今のめいじょうの縄張りと駿しゅん達の縄張りは重なっていないので、駿(しゅん)達を襲うこともない。


ただ、縄張りが外れているのは、これは偶然ではなく、ろく号機が常に駿しゅん達と一緒にいるので、二人が意図的に避けたというのがあるらしい。


分かっててそれを避けてくれる辺り頭もいい。


とにかく親バカもここに極まれりではあるが、自慢の子供達だよ。


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