誉編 威力

戦闘用のメイトギアさえ凌駕する力に加え、みずちが持っていたような<能力>が発現しないとも限らない。


自動小銃の弾丸を全く受け付けない、それどころか、計算上は対物ライフルでようやく貫通できるかどうかというあの<鎧>でも身に付けられたらそれこそ始末に負えない。


しかももしみずちと同じなら、何かダメージを受ける度に自身を強化していく可能性もある。


そうならないように一撃で確実に仕留める必要があると思うんだ。


たとえ卑怯と言われようとも、俺は家族を守りたい。そのために必要なことなら選択する。


そして実際に戦ってくれるのはエレクシア達だ。安全な後方で命令するだけなんだから、誹りを受ける程度はそれこそ俺の役目だろう。


彼女達を犠牲にしないためにも、安全で確実な方法を取りたいんだよ。


前にも言ったが、みずちの時には生き物相手にこんなものを使うことになるとは考えもしなかったから、頭によぎることさえなかった。


当然だと思う。これはあくまで戦闘用のロボットや戦闘艦を相手に戦う時に使うものだ。


メイトギアが運用できる程度のものですら、金やウランを超える比重を持つ金属(詳細は軍事機密だそうだ)を秒速六キロを超える速度で打ち出す訳だから、普通に考えれば生き物相手に使うにはあまりに過剰すぎるのが分かると思う。


ほとんど隕石の直撃を受けるようなものだ。それで生きていられる生き物がいるとはあまり思えない。


だが、エレクシアは、『確率は九十パーセント』だと言う。


本当になんなんだろうな、あれは。


<はるか昔に存在した超文明が遺した生物兵器>と言われたって驚かない。


と言うか、むしろそれくらいでないと道理に合わない。


あんな異常な怪物を生み出すような存在は。


排除も駆逐も無理なら何とかうまく折り合って生きていきたいんだがなあ。


とは言え、生き物にとって<天敵>の存在はむしろ健全なのか。


みずちがくを生み出したあの不定形生物は、ほぼ無敵に等しい存在ながら、増殖という点では脅威になるような増え方はしないことはこれまでの観察で分かってきている。それだけが救いか。


もっとも、あれがとんでもない勢いで増殖するようなものであれば、今頃、この惑星の動物は死滅していただろう。狙うのは基本的に動物だけで、植物については取り込んでいる気配がほとんどない。


まあそれも、あの不定形生物が他の生物を取り込むのが遺伝情報の収集が目的であれば、植物についてはもう既に十分、確保できているからということも考えられるのか。


植物はものすごく数が多いからなあ。


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