誉編 デバイス

新暦〇〇二七年九月二十五日。




ところで、セシリア、メイフェア、イレーネの三体は、やはりコーネリアス号でしかメンテナンスができないので、今でもコーネリアス号に行ってそれを受けている。


だからメイフェアがメンテナンスを受けに行っている間は、イレーネがその代わりにほまれの群れを警護することになるわけだ。


人間なら、どうしても対応に個体差が生じてしまうが、ロボットである彼女達にはその心配がほとんどない。情報の共有も簡単で、しかも確実だ。


いざとなれば<リンク>して、イレーネの体をメイフェアが使うこともできてしまう。


普通の人間には決してできないことだ。


…いや、実は人間の体にデバイスを埋め込んでネットワークに直接アクセスできる技術もあるにはあるんだが、今ではむしろ廃れた技術だった。そこまでしなくてもロボットが代わりにやってくれるし、人間は指示を出せばいいだけなので、一般への普及率は減る一方らしい。


一部の特殊な任務を負った軍人とかだけが行うものというのが現状だそうだ。


なにしろ、そのデバイスを介して、同じくデバイスを埋め込んでいる他人の体を乗っ取り、意のままに操るなんてことも一時期はできてしまったこともあったらしいし、それが基で忌避されたらしい。


AIやロボットを排斥しようという動きは極論にすぎるかもしれないが、さすがにその辺りまでとなると俺も『勘弁してほしいなあ』とは思うかな。


なんてことを、メイフェアの代わりにほまれ達を警護してるイレーネのカメラ映像をタブレットで見ながら、俺は考えたりしていた。


人間ってのは新しい技術が発明されたりするとそれに飛びついて勢いで突っ走ったりするが、ある程度まで行くと逆に揺り戻しが起きることも多いらしい。人間へのデバイスの埋め込みもそういうものの一種だったんだろう。


それでも一応、迷子や誘拐対策として子供のうちにチップを埋め込む程度のことは今でもされている。実は法律上はグレーな行為(本来なら本人の承諾がいるが、小さい子供の場合はそれが難しいこともあるからな)でありつつ見逃されてて、俺の体にも子供の頃に埋め込まれたそれが残されていて、エレクシアはその信号で常に俺の位置を把握してる。


取り出すことも信号を解除することもできるものの、俺は<惑星プラネットハンター>という職業柄、危険もあるから、いったん解除してあった信号をまた使えるようにしたんだ。


ただ、相手がエレクシアだからまあいいんだが、これがよく知らない他人だったりしたらすごく嫌だなあ。とは正直思う。


なるほど廃れていくのも分かるよ。ネットワークに繋がるということは、意図してそれを遮断しないと、常時、自分のことを誰かに監視される可能性もある訳で。


なにしろ、電子端末はそれこそどれがどこに置かれているかっていうのが瞬時に分かってしまうからな。


それを人間にまでとなると、いやはや、さすがに気持ち悪いか。


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