誉編 静 その1

新暦〇〇二七年五月八日。




ほまれの<第二夫人>であるしずかは、熟女である。


現時点では群れで三番目に年齢が高く<お局様>的な存在の彼女ではあるものの、かつては今のみことに似た感じの、<純情可憐な少女>という感じだった。


四代前のボスの娘として生まれ、しかしヒエラルキーとしては必ずしも高い位置にいなかったことで幼い頃には群れの中でイジメも受け、決して恵まれた境遇ではなかったと思う。


しかし、三代前のボスの寵愛を受けたことで立場が逆転。実質的に群れのナンバー3の地位を獲得(ナンバー2はらいと俺が呼んでいた雄だった)ことで自分をイジメていた者達をイジメ返すようになり、これによって四代前のボスのパートナーだった雌の大半を群れから追い出すまでに至った。


ただ、さすがにそれはやり過ぎだったらしく、群れの中での彼女の評価は芳しくなかったようだ。


だがその一方で、途中から群れに加わったほまれのことは気に入ってくれたらしく、可愛がってくれていた。


その時の<恩>ということなのか、先代のボスの時に危うく群れから追い出されそうになった時に、ほまれが彼女を庇うようにして仲間との関係をとりなしたという経緯がある。自分の<妻>にしたのも、その一環かもしれない。


それがきっかけになったのか、しずかも今ではかつてと比べると丸くはなったらしい。


もっとも、それでも気性はあおみことに比べて荒く、時々ケンカをしては騒動を起こすという一面もある。


とは言え、ほまれのことは好きなんだろう。彼にたしなめられるとシュンとなっていることも多い。


この辺りからも、ほまれが立派に<調整型のボス>として立派に役目を果たしていることが窺える。


正直、親としては誇らしくもあるな。


なんていうことをまず紹介した上で、しずかのことも詳細に触れていくことにしようか。




しずかは、先にも触れたとおり、ほまれの四代前のボスの娘として生まれた。四代前のボスは三代前のボスと並んで長くボスとして君臨したが、それだけに<妻>も数多く、子も多かった為に、同じボスの子でも群れの中での立場に開きがあり、末席に近い母親から生まれた彼女は、生れ出た直後から虐げられる運命にあったようだ。


彼女が生まれたばかりの頃は俺はまだこの惑星には来ていなかったので、当然、ドローンも飛ばしていなかったからこの時の正確な情報はない。その辺りについて、群れの仲間同士で話をしていた内容をメイフェアが聞き、それを基に推測した内容である。


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