誉編 命 その4

ほまれに助けられて群れに加わったらしいみことは、はっきり言って親子ほどの年齢差がある。


人間で言えば<小児性愛>だのなんだのと言われるレベルだろう。


だが、その一方で、ほまれしずかとも、親子ほどの年齢差がある。


しずかひそかに比べるとまだ若いものの、ひそかほまれを生んだ時には、もう、パパニアンとしては既に結構な年齢になってたからな。


つまり、熟女・同年代・少女という、綺麗に三世代に分かれた妻を、ほまれは娶ってるわけだ。


もっとも、それを奇異に感じるのは人間だけで、野生では子供を生み育てる能力さえあれば年齢はそれほど問題じゃなく、普通のことなんだろうが。


実際、ほまれは、三人の妻を同じように大事にしている。それぞれの間に子供も生まれ、ボスとしての役目もしっかりと果たしていた。


そんなほまれの下で、みことも、しっかりとボスのパートナーとしての務めも果たしているようだ。


子供達に乳をやり、守り、時には群れのルールを教える為に我が子を押さえつけたりもしながら頑張っている。その姿は、ほまれを育てていた時のひそかにも通じるものがあるな。


その一方で、上二人の妻の前では序列を理解しているんだろう。決してでしゃばった真似もしない。


この辺りはさすがに野生の動物だなとも思う。


群れの中で生きる為の身の振り方もわきまえているのが分かる。


あおの毛繕いをしていたかと思うとすかさずしずかの毛繕いもおこない、きちんとそれぞれのご機嫌を取ることも忘れない。


その辺りの振る舞いから想像する。


彼女がこの群れに加わったばかりの頃を。


とてつもなく恐ろしい出来事を目の当たりにして、きっと<不安>なんて言葉じゃ言い表せない感覚の中にいたんだろうと思う。


もちろん、人間に比べるとその辺りははるかにタフだとは思うものの、それでも恐怖などは感じる筈だからな。


そしてほまれも、彼女ほどではないにせよ、たった一人取り残されてたまらない不安の中に放り出された経験がある。


ほまれの場合は、ちょっとした冒険のつもりで遊びに出て他の群れの縄張りに踏み込んでしまい、それで追われて逃げ回ったことで俺達からはぐれてしまった形だから、自分の蒔いた種っていう面もあるものの、それでも、幼い子供にとってはとてつもない恐怖だったろうな。


その時にたまたまメイフェアと出逢い、結果としてそれで救われたから、たぶん、自分がメイフェアにしてもらったことを真似したんだろうと思われる。


それが、きっと不安の真っただ中にいたみことにとってはどれほどの救いになったのか……


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