誉編 メイフェアの日常 その5
ロボットである彼女は食事の必要はないが、しかし同時に充電はしないといけないので、その為に、俺の宇宙船<
既に製造されてから二千年以上経っている彼女は、内蔵した化学反応式のバッテリーが劣化してしまい、予備的に装備されている<キャパシタ>というタイプのバッテリーでのみ稼働している状態だった。
キャパシタは、理論上、経年による劣化は殆どないと言われているものの、一度に蓄えられる電気の量が非常に少なく、化学反応式のバッテリーが満充電なら一ヶ月ほどもつのに比べ、半日くらいしかもたないので、常に充電し続ける必要があるんだ。
劣化した化学反応式のバッテリーを交換しようにも、この惑星ではそんなものは手に入らない。
数十年単位の航宙を目的としたコーネリアス号に備えられた多目的工作室を用いても、この惑星でも採掘できる材料で製造が可能なリチウムイオンバッテリーまでは作れても、それではキャパシタよりも性能が劣るので意味がないのだ。
なにしろ、メイトギアに搭載可能なサイズで作ると、僅か数時間、しかも大人しくのんびり作業をしていてもその程度しかもたないのである。
二十一世紀辺りにはこのリチウムイオンバッテリーが主流だったと聞くが、この程度の性能ではほとんど実用性がなかったんじゃないだろうかと、今の技術水準が当然の俺には思えてしまうのも正直なところだ。
今時、ロボットや自動車でも一ヶ月は無給電で動作できるのが当たり前だからな。それに何より、メイトギアを含むロボットの多くは、正規品以外のバッテリーを装着するとセーフティが働いて電源が落ちてしまうんだ。
だが、コーネリアス号の工作室で無線給電器を大量に製造できたことで、バッテリーの問題はカバーできるようになったのは幸いだった。
ただし、要人警護仕様機の彼女が全力で稼働すると、給電と放電のバランスが取れず、数十分で動けなくなってしまうが。
とは言え、他にはロボットも戦車も戦闘機もないここではそこまでの稼働をすることもまずないので、特に問題はない。
あと、今は、家庭用の家電製品でも、それなりの価格帯以上のものであれば完璧な防水機能も有しており、そのレベルとまではいかなくてもある程度それに準じたものくらいならコーネリアス号に予備として備蓄されていた部品を用いれば工作室で製造できるので、念の為の簡単な屋根を設けたところに設置しておけば、通常の運用をする限りは十分だった。
この辺りは、決まった縄張りを持ち大きく移動することのないパパニアンの習性とも相まって、時々、バッテリーのことを忘れるくらい問題なくなってるんだよな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます