誉編 メイフェアの日常 その4

パパニアンが最も好んで食べる果実が多く生っている辺りを主な寝床にしてるために、あまり移動しなくてもそれは確保できた。


ボスであるほまれは真っ先に餌にありつく。


だがこれは、『ボスが一番偉いから』ということと共に、実は危険がないかをボス自らが確かめるという意味もある。だから、群れでも有力な強い雄がボスに続くんだ。万が一、危険があった場合には相応できるように。


ここで、ちょっと横暴なボスだったりすると、自分達だけ良い部分を食べ切ってしまって雌や子供には余りものしか与えなかったりするんだが、ほまれはそうではなく、美味しく実ってるものも残してやって、雌や子供達にも分け与えてやるんだ。


一般的には、ヒエラルキーが上位の者達がいい思いをすることで子供達のハングリー精神を養うという方法論もあるかもしれないが、この群れの場合は、正直、その必要はあまりないだろう。


なにしろ、<外敵からの守り>においては、メイフェアという最強の手駒を持っているほまれによる鉄壁の守りがあるので、そこまで攻撃性を磨く必要もなかったりするんだよな。


要人警護仕様機であるメイフェアのセンサーは、視覚、聴覚、嗅覚、触覚だけでなく、パパニアンでは捉えられない波長や音量の光や音、振動まで捉えることができる上に二十四時間センサー類を稼働状態にしておくこともできるので、見落とすことがまずないんだ。


ただし、だからと言ってあらゆる外部からの干渉をシャットアウトしてしまうこともない。


パパニアンの習性として、ある程度の年齢に達した若い雄は巣立ちという形で群れを離れ、そうして他の群れに合流し、時にはボスの座を争って戦うこともある。これ自体は、群れの中だけで近親交配を続けることがないようにという自然の摂理的な意義もあることなので、ボスの座を狙う若い雄の挑戦までメイフェアが退けてしまっては逆に具合が悪いと思われる。


なので、縄張りをめぐっての群れ単位の襲撃や、天敵の襲撃については対処するものの、群れそのものの存続に必要な<外からのリスク>については様子を見るにとどめるという感じだろうか。


いずれ、ほまれのボスの座を狙う者が現れたとしても、それについては手出ししないように申し渡してある。


その一方で、ほまれが命を落とすようなことがあっては困るので、勝負がついたら生命保護を優先するようにも言ってあるけどな。


メイフェア自身も、それで納得してくれてる。


「それがほまれ様の為であれば」


とね。


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