私って薄情なのかなあ(それを言うなら)
そうして滞りなく
ただ惜しむらくは、
むしろ、実の母親である
それについて
「私って薄情なのかなあ……?」
なんて訊いてきたが、
「それを言ったら俺なんて全然泣いてないぞ。こういう時に必ず泣くものだというのはただの思い込みだよ。人間、喪失感が大きすぎると逆に泣けなくなることもあると聞くし」
と答えさせてもらった。すると
「そっか。別に変じゃないんだね」
って。
そうだ。別に変じゃない筈だ。むしろ、
『こうであるべき』
などと押し付けてくる方が変だと俺は思う。
人間以外の動物でそういう時にやたらと泣いたりする方が珍しいくらいだ。と言うか、殆どいないくらいだろう。
『人間は動物とは違う!』
と思いたいから、
『人間はこういう時は悲しみ、涙を流すべきだ』
なんてことにしたいのかもしれないが、それがもう歪んでいる気がするな。分かりやすく悲しんでいなくても心の中ではきちんと悼んでる場合だってあるだろうにな。
と言うか、やけに大袈裟に泣いてみせてる人間だって本当に悲しんでるのかどうか怪しい場合も少なくないと思うんだよ。
結局、その人の心の中なんて、本人にしか分からないだろう。勝手な思い込みで決めつけられると本当に迷惑だ。
「
そんな俺の言葉に、
「お父さんには何でも分かっちゃうんだなあ」
って
「何でも分かるっていうのはさすがにあれだけど、
それも正直な気持ちだった。
「とにかく俺は、
「…ありがとう、お父さん……」
そうだ。こういう時に泣いてるかどうかだけで自分の子供を『薄情かそうでないか』の判断をする親がいるとしたら、俺はそれが悲しいと思う。それってつまり、子供のことをよく見てないって話だろうからな。
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