命の危険があると(判断した時には)

などと、アサシン竜アサシンのカッコよさを再確認しつつも、呑気に構えている訳にもいかないから、俺とシモーヌも今後の対応について検討を始めていた。


もっとも、警戒網の再確認と、万が一遭遇した際の手順の再確認くらいしかすることはないが。


「命の危険があると判断した時には、容赦なく……だな」


「ですね。自分が生き延びることが最優先です。研究者としてはいろいろ思うところもありますが、それも生きていてこそ、自分の家族の安全が確保されてこそのものですし」


こういう場合、研究者が生け捕りや保護を強く主張して結果として危険な目に遭うというのが定番なのかもしれないが、シモーヌはそうじゃなかった。彼女も自然の中で生きることと研究者としての立場については割り切っていて、俺達の安全を優先してくれる。


それに、エレクシアやイレーネがいてくれればよっぽどのことがない限り、殺さずに済む。


だから俺達が確認しているのは、その『よっぽどのこと』の時の話だ。


具体的には、


『エレクシアやイレーネが間に合わない可能性がある時』


って感じだろうか。エレクシアやイレーネが駆け付けるのが間に合わない可能性があるのに、間に合うことを期待して待つようなことをしない。ということかな。今この瞬間に『ヤバい!』と直感した時には躊躇なく撃てってことだ。


そういう部分をしっかり詰めておかないと、思わぬ形で足を掬われることもあるだろう。


それは困る。


もっとも、シモーヌの銃の腕前は、俺よりもまったくセンスを感じない素人のそれだから、そんな状況になった時点でもうアウトだろうけどな。だからそういう状況に陥らないように心掛けるということでもある。


しかし彼女は最初に出逢った時にワニ人間クロコディアに襲われて死にかけたのがトラウマレベルで強烈に記憶に残っていて、決して自分から危険なことをしようとはしないが。


これぞまさに<怪我の功名>ってやつかもな。過酷な経験でもそれを活かせるのなら結果的には辛いだけじゃなくなるってことで。


いや、そんな経験はしないで済むならそれに越したことはないけどな。


いずれにせよ、それをしっかりと守ってきたから俺達はここまで無事にこれたというのもあると思う。第三者として見てる分には波乱に富んだ展開があった方が面白いんだろうが、当事者としてはそんな目に遭わない方がいいに決まってる訳で。


だからこれからも、俺達は波乱に富んだ日々じゃなく、極力、平穏で穏やかな毎日を過ごすことを心掛けていきたいと思う。


こんな日常があってもいいじゃないか。


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