<強さ>は単純に(カッコいい)

新暦〇〇二三年九月十四日。




マイクロチップを埋め込んでの位置の把握は、ばんの一件がきっかけになった。それまでにも検討だけはしてたものの『そこまでは必要ないか』と見送ってきたんだ。


で、今回のアサシン竜アサシンの出現でその必要性がさらに高まった気がする。


そんな、まさかのアサシン竜アサシンの出現に戸惑いながらも、俺達はいつも通りの生活を続けることを心掛けた。


元々そういう危険は常にある訳だから、あまり過剰に反応しても神経がもたないしな。


エレクシアはそれこそドローンから送られてくるデータを常時モニターして、警戒を行ってくれてる。今回も彼女がアサシン竜アサシンの姿を捉えたドローンのことを教えてくれたから気付いたんだし。


一方、件のアサシン竜アサシンは、最初、それまで自分がいた場所とは違ってしまっていることに戸惑っているような様子も見せていたが、すぐにそれにも慣れ、狩りを始めたようだった。


改めてその様子を見ると、恐ろしく慎重に気配を殺して死角から近付き、おそらく獲物の側からしたら何が起こったのかも分からないうちに長い腕に絡めとられ首筋に食らいつかれ絶命するのが確認できた。


しかも、死角から近付くだけでなく、明らかに姿が見えてるであろう位置にいても、気配の殺し方が完璧なのか気付かれることなく近付き、見事に仕留めることもあった。


もちろん、常にうまくいく訳じゃなく、成功率は三割といったところだろうが、この手の<狩り>をする種類の動物としては決して低くない成功率だと思われる。カマキリ人間マンティアンのそれに迫るくらいだろうか。


しかも失敗した例にしても、獲物に完全に気付かれて逃げられる場合はむしろ少なく、狙われていることにさえ気付いていない獲物の方がたまたま移動して難を逃れるという形が多いようだ。


この点でも、カマキリ人間マンティアンの狩りのそれとよく似ている。だから、種としてはまったくの別系統ながら、結果として似たような生態を得た例と言えるのかもしれない。


シモーヌも、専門は植物だが動物にもそれなりに興味があるからか、その辺りに興味をそそられているらしい。


「危険な獣ではありますけど、生きる為の戦略としては非常に合理的ですよね」


どこか嬉しそうに話す彼女に、俺も共感せずにいられないものも感じる。カマキリ人間マンティアンであるじんもそうだったが、<強さ>っていうものに対しては憧れのようなものを抱いてしまうのはあるのかもしれない。


<強さ>は単純に『カッコいい』んだ。それは否定しきれない。


ましてやカマキリ人間マンティアンの場合は、純戦闘用ロボット<アームドエージェント>にも通ずる機能美も感じ取れてしまうから、なおのことかな。


それに比べるとアサシン竜アサシンは、見た目には地味なのは否めないにしても、合理性は十分に感じさせるから、これはこれで『アリ』な気がする。


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