人間ってのが(いかに矛盾した生き物か)
新暦〇〇二三年九月六日。
本音ではここにいればいいと思いつつ、草原で生きるという選択をした
先に巣立っていった子供達はもう既にすっかり馴染んでるから、心配はしているけど不安というほどじゃない。
あの子達の普段の様子を見てるだけでも、野生を生き抜く為に必要なものをちゃんと備えてるのが分かる。だから外敵に襲われた時にちょっとばかりドローンで相手の気を逸らすとかして援護するくらいで済ませてるんだ。
……って、『なるべく干渉しない』とか言っててこれだもんな。人間ってのがいかに矛盾した生き物かってのが自分自身を見てるだけでも分かるよ。
批判があったりするのも当然だろう。『二枚舌だ!』と言われたりもするかもしれない。だが、これも正直な親心なんだよな。
『なるべく干渉しない』の『なるべく』がどの程度を指すのか、この辺りの基準が人によって違ってしまうというのもある。俺としては、
『このくらいならまあ過度の干渉ってことにはならないんじゃないか…?』
という思いはある。それ自体が俺の勝手な解釈かもしれないが。
でもまあ、『俺のやり方こそが正しい!』とか言って他人に押し付けるようなことをしなければ大きな問題にはならんのじゃないかとは思うかな。
元より押し付ける相手もロクにいないここじゃ。
もし子供達にそれを押し付けるようなことをしていたら反発を招いていたかもしれないな。
俺の言動にはどうしたって矛盾がある。
と言うか、元々人間の言動には常に矛盾がつきまとう。口では優しさや思いやりを説きながら自分が気に入らない相手には攻撃的になるなんてのはその最たるものだろう。
相手にそういう矛盾を見抜かれるから偉そうに説教をする人間は嫌われる。まあ、一見しただけなら矛盾しているように見えても、きちんとその間を埋める道理があったりするかもしれないが、それが伝わらないことも多いし、しかも人間は自分に都合の悪いことは見えない聞こえないことも多いから、たとえ説明していても伝わってないことも多いんだよな。
他人の発言の一部分だけを切り取り、さらに曲解して罵ったりするなんてのは、まさにそれの極致かもしれない。
『そういう意味では言ってない』
と言っても聞く耳を持たないなんてこともザラだ。しかも自分が他人に同じことをされると途端に被害者ぶる、とか、ありがち過ぎて笑い話にもならない。
自分が批判されたり反論される覚悟もなしに他人を批判する人間も、見ない日はないくらいにありふれてる。
とかく、矛盾してない時がないのが人間って生き物なんだろうな。
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