父娘揃って(素直にな)
「ねえ…お父さん……」
「なんだ…?」
「私ね…不思議なんだ……ママのこと<お母さん>っていう実感ないのに、なんかすごく、こう、胸の辺りがキューッとするんだ……
なんでだろう…私にとってお母さんはシモーヌのはずなのに……」
「そうか……でも、
「いいの…?」
「ああ、いい…それでいいよ……」
「そっかあ……それでいいんだ……じゃあ、泣いていいんだよね……」
「いいよ、好きなだけ泣いたらいい……」
「うん……」
そして
「う……うぁ…うぁああぁぁぁん……!」
と、大きな声を上げ、本当に幼い子供のようにボロボロと大粒の涙を流しながら泣き出した。
それにつられて、俺も、
「ぐ……ぐ…うっ……」
と嗚咽が漏れてしまう。
父娘二人して、
すると、そんな俺と
まるで、『よしよし』ってしてくれるように。
実はこの時、
だからこそ、
ただ、それは言い換えれば、
『してもらったことは返す』
という方向にも働くものでもあるだろうから、労わってもらえた場合にはそれを返すということもできるんだろうな。
それでも、
つまるところ、他人を労われば自分も労わってもらえる可能性が高くなるし、他人に攻撃的になれば自分も攻撃される可能性が高まるということなんだろうな。もちろん、必ずそうなるという訳じゃないにしても、少なくともはっきりと体感できる程度の差はあるんじゃないだろうか。
とは言え、周囲にいる人間が揃いも揃って人でなしだったりするといくら労わってみてもそれをいいように利用されるだけだったりするかもしれないから、そういう場合は、そんな人間に囲まれている環境をまず何とかしないといけなかったりもするかもしれないが。
その点でも、
でも、気を付けないといけないのは、
『こっちが優しくしたら相手も優しくしてくれるのが当然』
とか思わないことだという気がする。自分が優しくしたからって相手も同じようにしてくれるとは限らない。それは事実だ。だから、『優しくしたら優しくしてくれて当然』と考えてるとその通りにならなかった時に苛々してしまって、結局自分も攻撃的になり、それがまた自分に返ってくるだろうし。
優しくされても態度が柔らかくならない人間は、元より相当根深い精神的病巣を抱えてるんだろうから。
昔の俺がまさにそれだったな……
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