いくら家を壊されても(怒る気になれない)

新暦〇〇二二年十一月三十日。




なんて、ほまれの群れでボスの座を巡りごたごたしている間も俺達の日常は変わりなく続いていて、ひかりじゅんあかりの仲の良さも変わりなく、まさに順調だ。


じゅん自身が、名前の通りの順応性を見せてくれている。もちろん、ボノボ人間パパニアンとしての習性も残しつつだが、ひかりの言うことをよく聞くようになってくれてるんだ。


その一方で、あかりとは<悪友>的なノリが垣間見え、近頃ではあかりの方がじゅんに感化されたのか、幼い頃にほむら達とやっていた乱暴な遊びを再開してしまった。


さすがに家の中だと狭すぎるからかあまりやらないが、一歩外に出ると、立体的な動きの鬼ごっこのような遊びをやっていた。しかもそれに、あらたや、しんの子供であるこうかんまでが交じって、実に楽しそうだ。


おかげでしんは子供達の相手をせずに済み、母親のふくそっくりな、ぐうたらにも見えるくらいに寝てばかりという一日を過ごしていた。


ただし、その分、家の修繕はほぼ毎日だけどな。屋根とか壁とか。


まあそれはいいとして、元々、密林の中で立体的な動きを見せるボノボ人間パパニアンとして暮らしていたじゅんや、ボノボ人間パパニアンそのものであるあらたは元より、ライオン人間レオンであるしんの子でありながらヒョウ人間パルディアあるげんの子でもあり、密林で狩りの練習をしているこうかんも負けず劣らず立体的な動きを見せている。


しかも、タカ人間アクシーズであるようの娘であるあかりも、見た目は人間そのものでありながら、タカ人間アクシーズ最大の特徴である翼を持たないにも拘らず、十分にじゅん達についていくことができていた。


「うおーっ! 逃がすかーっっ!!」


とか叫びながら縦横無尽に走り回る。その姿がまた楽しそうで、何度壊れても何度でも直すことを前提で作った家をいくら壊されても怒る気になれない。


ただ、あらたが同じようにして遊ぶのは意外だった。ほぼ巣立ったようなものとは言ってもこの家を住処すみかにしていてまだあどけなさの残るこうかんはともかく、ボノボ人間パパニアンとしてはもう十分、大人と言える年齢のあらたが、子供みたいに遊んでるんだ。


『子供の頃はやけに大人しい感じだったし、りんとイチャイチャするので忙しかったから、その分を、今になって発散してるのかな』


なんて思ってしまう。


だが、そうなってくると気になるのがりんなんだが、彼女はあらたのようには遊ばず、ほぼ毎日、密林の中を歩き回ってた。狩りもそうなんだが、こちらはこちらで、今まで餌を取りに出る以外はほぼ家に閉じこもってあらたとイチャイチャしてただけだった分、自分の世界を広げようとでもするかのように、な。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る