メイフェアの愚痴(感情を装備してるからな)

新暦〇〇二二年九月二日。




俺のところから巣立っていった今のほまれは間違いなく野生のボノボ人間パパニアンの一人だが、人間である俺の息子として育った経験は間違いなくしっかりと残っていて、純然たる野生のボノボ人間パパニアン達とはやはり違うところもあった。


どうしても単純な<腕っぷしの強さ>が重視される傾向にあるボノボ人間パパニアンの序列の中で、<頭の良さ>を含む<総合力>とでも言うべき形で、他のボノボ人間パパニアン、特に雌と子供の支持を集めてるようだ。


もちろん、元々、他の種族に比べても知能が高めで社会性に富むボノボ人間パパニアンにおいてはただ単に<ケンカが強い>だけじゃダメなんだが、それでも、外敵から群れを守るという重要な役目があるからには一番に求められる素養ではある。その点でほまれは、格段に劣ってる訳ではなくても、そういう部分での強さならあいつを凌ぐのは何人もいる。


が、ほまれには、メイフェアを従えてるという、もはやチートとも言うべき絶対的なアドバンテージがあるからな。いわば、一国の軍隊ですら敵わない強力な私兵を抱えているようなもので、賢さに加えて、メイフェアを含む<力>という意味では、やはり将来のボスの最有力でもあるらしい。


しかしなにぶん、まだ若いということで、その辺りで<次のボス候補>としては必ずしも最有力という訳でもない。


それでも有力な候補の一人であることには変わらず、次のボスの座を狙うらいからは目の敵にされてる部分はあるようだ。


ほまれ様をライバル視しているのは分かるのですが、やり方が陰湿陰険で、私にはとてもボスの器とは思えません…!」


<感情を装備したメイトギア>であるメイフェアとしては、ほまれらいに意地悪されているように見えてしまって、正直、腹に据えかねてる状態みたいだな。


「気持ちは分からないでもないよ。俺だって自分の息子が会社で上司にいびられてるようなものだからな。とは言え、若輩ではあってもあいつももう立派な一人前のボノボ人間パパニアンなんだ。何でもかんでも手を貸すのがあいつの為になるとは限らないさ」


俺に対してロボットらしからぬ<愚痴>をこぼしてくるメイフェアを、俺はそう言ってなだめていた。


するとエレクシアも言ったのだった。


「マスターの言う通りです。私達ロボットは、人間を支えこそすれ、その自主自立にまで干渉すべきではないというのが、大原則のはずです。ほまれが自らあなたに助けや癒しを求めてきたのであれば応えるべきですが、そうでない限り、見守るに留めるべきでしょう」


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