パパニアンの社会(色々あるようだ)

新暦〇〇二二年八月二十九日。




「それでは、いってきます」


今日は、シモーヌとメイフェアがコーネリアス号に<里帰り>する。以前は、ほまれの警護にエレクシアが代理で赴く為に、俺が宇宙船の中で寝てる夜の間に行くようにしてたが、メイフェアが里帰りしている間はイレーネがほまれの警護をするようになったことで、日中に行くこともできるようになったんだ。


身体機能的には人間であるシモーヌにはやはりその方が負担が少なくて済むし。


ただ、ロボットであるセシリアとイレーネが<里帰り>する時は、やはりこれまで同様、こちらでの家事等の作業が一段落付く夜間に行ってもらってるが。


休息を必要としないロボットならではだな。


ここしばらくほまれ達のことに触れてこなかったが、それはつまり、触れる必要がないくらい、ほまれ達の暮らしが平穏だということでもある。ほまれ自身にもあおというパートナーができて、たもつみどりという子供も生まれ、群れの中での地位も着実に上げてるようだ。


なにしろ、メイフェアという無敵の<手駒>がいる上に、ほまれ自身も高い知能を持っていることで、ボノボ人間パパニアンとしてはおよそ次元の違う存在になってるからな。


だが、だからといって驕り高ぶることもない。メイフェアがしっかりと御者の役目をしてくれたのもあって、ボスを支えて群れを守る、立派な調和型の参謀役になってるらしい。いずれはほまれがボスの座を射止めることになるだろう。それまでの間にはその座を巡って挑んでくる若いボノボ人間パパニアンもいるだろうから、油断はできないが。


実際、これまでにも<ライバル>が現れて、挑みかかってきたこともあるようだ。


ボノボ人間パパニアンの社会でのルールに基いた争いについては、命に係わるようなことでない限り極力手出ししないようにメイフェアには要請してある。あいつの<主人>はあくまでほまれだから、俺の方からは基本的に命令はできないものの、<要請>という形なら指示を出すこともできるんだ。


メイフェアはそれをしっかりと守ってくれてる。これまでに群れ内部で起こったことについては、ほまれがちゃんと自ら対処してきた。だから、時には負けることもある。その度に群れでの序列が上下するが、ほまれ自身に負けた時の経験を活かすことができるだけの知能があるので、総じてみれば順調と言えるだろうな。群れの雌や子供達からの支持も厚い。


が、中にはそれが気に入らない雄もいるのだとか。


俺が<らい>と名付けたその雄は、基本的にボスが一番の古株であることが多い(ボスになれなかった成体の雄は群れを追われ、早晩、亡くなってしまうことが多い為)ボノボ人間パパニアンの群れにおいては珍しく現在のボスが今の座に就く前から群れにいる個体で、ある意味では長老的な存在でもある。しかし同時に、年齢的にはまだ十分に現役であることから、今なおボスの座を狙っている野心溢れる雄なのだった。


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