光が絵本から学んだこと(なにしろ原書に近いやつだからな)
新暦〇〇二二年七月二十日。
『生んでやったんだ。育ててやったんだ。感謝しろ』
俺が
こんな、人間社会が存在しない、生活インフラも社会保障もない、何より他に人間が殆どいないこんな世界に送り出すことがどれほど無責任で考えなしかなんてのはな。
ただそれでも、だからこそ
だが同時に、たとえどんな環境でも、どんな境遇でも、『生まれてきてよかった』と思うことはできるというのは、俺自身が今そう思ってるから、間違いなくあると実感してる。
それに対しても
「私ね、お父さんの子供に生まれてきて良かったと思う。ここには確かに文明もなくて人間らしい生活はできないかもしれないけど、たくさん本を読んで感じたんだ。普通に人間のいる世界に生まれてきたって大変な思いをしてる人はいくらでもいたんだなって。だからあんなに辛い絵本が描かれたんだなって。
それに比べれば、ここは天国だよ。
お父さんがいて、お母さんがいて、兄弟姉妹がいて、エレクシアやセシリアやメイフェアやイレーネがいて、みんなが私を愛してくれてる。
もし、他の、普通の人間社会に生まれてても、お父さんがいなかったら、みんながいなかったら、私は今みたいに幸せじゃなかった気がする。白雪姫やシンデレラみたいに、『最後は王子様と結ばれて幸せになりました』みたいに上手くいかなかった可能性の方がずっと高いと思う。
むしろ人魚姫みたいに、『王子様とお姫様が幸せそうにしているのを見守りながら泡になって消えてしまいました』みたいな悲しい最後になることだってあったと思う。
それどころか、赤ずきんみたいに、<人食い鬼>に犯されて食べられてしまうことだってあったかもしれない。
そう考えたら、どこに生まれてたって、お父さん達がいなかったら同じだったんじゃないかな」
って。
考えてみればそんな話が民話として語り継がれてた人間社会も、下手をすればここよりも厳しい世界だったのかもしれないな。
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