変えたくない変わりたくない(部分もあるから)

新暦〇〇二〇年七月二十二日。




なんて、偉そうに言ってるように見えるかもしれないが、これはあくまで俺がそう心掛けてるというだけの話だから、それで俺の場合は上手くいってるというだけだから、他人がどう考えてようがどう生きようが俺にとってはどうでもいいんだ。


ただ、自分が選んだ考え方、生き方をしておいて『どうして上手くいかないんだ!?』と泣き言を並べるのは、正直、みっともないとは思うかな。だったら今のやり方を改めればいいじゃないかと思う。


結局、どっちを取るかなんだよ。今の自分の考え方ややり方を貫きたいならそれで上手くいかないことがあったとしてもそのことを理由に文句を言うのは筋違いだと思うし、上手くいかせたいなら状況に合わせて自分を変えていく必要もある。


俺の場合は、基本的には後者かな。しかし、どうしても変えたくない変わりたくない部分もあるから、それで上手くいかない時は、いつまでもクヨクヨしたり誰かに八つ当たりしないように心掛ける。


そんなところか。


いつまでもクヨクヨしたり誰かに八つ当たりしたからって上手くいく訳じゃないもんな。


まあ、クヨクヨはついしてまうし、いつまでも引きずってしまいそうになる性分なのは事実だが、少なくとも八つ当たりはしたくないな。


それで言うと、ばんがエレクシアに拘って毎度撃退されるのも、現実を受け止められてないからかもしれない。


あいつにしてみれば、


『なぜ勝てないんだ!?』


ってことかも知れないが、生身の人間が素手で走るトラックをそのまま受け止めようとしてるみたいなものだからな。どう足掻いたって変えられる現実じゃないんだよ。


そういう相手に『負けない』為には、『戦わない』という道をとるしかない。それを選択できるように、あいつ自身が変わるしかないんだ。


虚仮こけの一念、岩をも通す』


とは言うが、現実問題としてできないことはできないんだ。


どれほど願ったって死んだ人間が生き返らないというのと同じだ。現実は物語とは違う。物語の世界に浸って、現実では有り得ないことが起こる心地好さに浸ってたって現実が変わる訳じゃないというのもそうだ。いつか向き合わなきゃいけなくなる。


それでも認めたくないなら?


その時には、現実に押し潰されるだけだろうな。


ばんの場合には、エレクシアはあいつが致命的な怪我をしないように手加減してくれてるが、それだって何かの弾みで失敗することは有り得る。となると、命を落とすのはあいつの方だ。


が、もう一つ、方法がある。


それは、俺達があいつの縄張りに踏み込まないこと。


「という訳で、E77、E78、E113、E114の四区画を、当分、調査の対象から外そうと思うんだが、どうだろう?」


俺の提案に、シモーヌも、


「ええ、良いと思います。元から、絶対にしなきゃいけない調査でもないですからね」


と二つ返事で応じてくれた。


そんな訳で、ばんを死なせないうちに対処することになったのだった。


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