子供が何を考えてるか(分かると嬉しいもんだな)

新暦〇〇一一年十二月三日。




正直、ひかり以外の子供達の細かい感情や気分といったものはいまだに掴みきれた自信はないが、彼女については、やっぱり見た目が人間そのものであることと、ほぼ獣のメンタルとは言っても、絵本が好きだとか、間違いなく人間のメンタルも持ってるから、微妙な表情のニュアンスみたいないのが分かるのかもしれない。


でもそれも、俺がずっとこの子のことをよく見てたからっていうのもある気がする。


『子供が何を考えてるか分からない』


人間社会では当たり前のように聞く話だが、正直俺も、子供達のそういうのがちゃんと分ってると自信を持って言えないが、だけど分かる部分もあるんだ。分からないのは、結局、子供のことをよく見てないからなんじゃないかって、今は思う。


ほむら達のことだって、少なくとも機嫌が良いか悪いかくらいは分かる。幸せそうかどうかくらいも。


そうだ。ほむら達はちゃんと幸せそうにしてる。それが分かるから、もうこのままここでいてくれてもいいって思えたというのもあったんだ。


子供のことを理解する為には、やっぱりちゃんと普段から見てないとダメだって感じた。普段はロクに子供の顔も見ないで、たまに思い出したみたいに父親面してるようじゃ、子供の気持ちなんて分からなくて当然じゃないかな。


普段の表情を知っているから、普段とは違う表情をしてたらそれが分かるんだ。


まったく。こうやって遭難してからそれに気付くとか、どんだけ皮肉なんだか。人間社会にいた時に気付いてれば、結婚や子供を持つことに対して気楽に考えられて、もう少し違う生き方もできたのかもしれないな。


って、これも結局は<たられば>に過ぎない話か。




人間社会じゃ、メイトギアがあんまりにも優秀でついつい任せきりにしてしまって、メイトギアを間に挟まないとまともに子供と会話もできない親もいるらしい。


それで言えば俺も、普段はあまりひかりと会話とかはしてないが、なんだかんだであの子のことは気にかけて見てたから、何気なくいつもと違う表情をしてたら分かるんだって、今まさに実感した。


そうか。子供を見守るって、こういうことか。


子供が隠し事をしてるとか、元気がないとか、親に隠れて何かをしてるとか、悩んでいるとか、そういうのはきっと普段の様子に出るんだと思う。だけど、普段から見てないとその微妙な違いに気付けない。<勘>とか<予感>とかいうのも、実はそういう細かい部分の変化を感じ取ることで働くんじゃないかな。


親になる時の講習でそういうのも教わるらしいが、それでも、言い訳を並べて子供のことをちゃんと見ない親っていうのも今でもいるらしい。それで『子供のことが分からない』とか言ってるんだから、<身から出た錆>ってもんじゃないだろうか。


なんて偉そうに言っても、俺も、ひかりのさっきの表情が分かるまでは、はっきりとした実感はなかったんだけどな。


分かると、なんか嬉しいよ。


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