スペック(いや、おかしいだろ、これ)

ヒト蛇ラミアは確実にコーネリアス号の方に向かって移動していた。その途中に獲物になりそうな大型の動物は見当たらない。まさしく<怪獣>以外の何ものでもない巨体が恐ろしい速さで迫る。


コーネリアス号との距離が五キロとなった時点で、俺は決断した。


「駆除だ! ヒト蛇ラミアを駆除しろ!」


俺の命令を受けて、後退していたドーベルマンDK-a零号機が停止。武装すべてのセーフティーを解除し、攻勢に出た。


一気に距離を詰めて、十分に近付いてから、ハンドガンで牽制。


だが、ヒト蛇ラミアは両腕を交差させるようにして自分の体を守った。何かを察したのかもしれない。その両腕の外側には鱗がびっしりと生えていた。そして拳銃弾は、鱗に当たってチイン!と、僅かな火花と金属音を上げて弾かれた。


「…な?」


三十八口径とは言え、並の動物ならどんな大型の動物でも皮膚くらいは貫く筈だ。なのに弾丸は、まるで金属の盾にでも阻まれたかのようにまったく歯が立たなかった。


すぐさま、弾丸が当たった時の音声が解析され、それが情報として送られてくる。


「マスター。ヒト蛇ラミアの鱗の強度についての予測がでました。恐らく、タングステン並みの硬度と靭性があるものと思われます」


「はあ!?」


エレクシアが読み上げた情報に、俺は耳を疑った。


「タングステン並みの強度を持つ鱗ってなんだ!? そんな生物がいるのか!?」


俺の言葉に答えてくれたのはシモーヌだった。


「一部の惑星には、確かにそういう異様な特性を持った生物もいます。数は少ないですけど。これもそういう生物とのキメラということでしょうか」


「…なんだ、そりゃ…」


正直、そうとしか言えなかった。あの巨体に運動性にタングステン並みの強度の装甲を持つとか、マジもんの<怪獣>じゃないか。


ハンドガンは当然歯が立たないし、ショットガンも、ヘビの胴体の背の側の硬い鱗を持つ部分を盾にして防がれ、全く通じなかった。頼みの綱のロケット砲も、恐ろしい反応速度で躱される。


つまり、ドーベルマンDK-a零号機では足止めさえままならないってことだ。


「くそっ、なんてこった」


こうなったら少しでもコーネリアス号から引き離す為に、回り込んで囮に……!


と思ったのも束の間、回り込もうとして段差に引っかかった瞬間、ヒト蛇ラミアの胴体がドーベルマンDK-a零号機に絡みつく。


一瞬で、深刻なダメージを受けたというエラー表示で、ステータス画面が真っ赤になった。


そして、ヒト蛇ラミアに絡みつかれ殆ど姿が見えないにも拘らず、あっという間に形を失っていくのが分かったのだった。


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