青酸化合物混入事件

 テレビでは、連日同じ事件のニュースが報道されていた。青酸化合物混入事件の話題だった。

 七年前に他県で起きた同様の事件とも結び付けて、捜査されているらしかった。


 朝食中に男性とその母親が、青酸カリ入りの牛乳を飲み、病院に運ばれたが二人とも死亡。男性の妻は、牛乳を飲んでおらず助かったという話だ。


 司会者が、頻りにその不運と悲劇を嘆き、怒りを露にしていた。


 麻梛は、ソファーでゆっくりとくつろぎ、そのニュースを観ながら思っていた。

 不運や悲劇なんて、世の中に有り触れている。

 そんな物は誰に当たるか分からない。

 病気も、事故も、殺人事件だって、同じ事だ。

 死はすべての人に寄り添っている。

 怒っても嘆いても仕方がない。

 司会者は、自分の身近に潜んでいるとは思いもしないのだろう。


 麻梛にとっては、至極当たり前の事だった。


 これで、茶色い小瓶の中の御守りに問題が無いと証明された。

 麻梛は、ホームセンターへと出掛ける準備をした。



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