第1部 コンビニでヒーロー

出会うべくして出会う2人

第1話

桜が咲いている。窓からの暖かな日差しで俺は起きた。寝ぼけ眼で時計を一瞥し、すぐにベッドから飛び起きようとして、ふと我に返り、やめた。

「なんだ、俺、学校行ってないじゃん…」

自分で自分を嘲う。そうだ、俺は絶賛不登校中。いじめられて不登校になった落ちこぼれ。親に心配され、学校にも迷惑をかけてしまったゴミ人間だ。親はいじめられるのならいっそ学校へ行かないほうがマシだと言う。だけど、学校に行かない俺はこれからどうなるんだか。道から逸れた人間には何があるんだ。何もない。求められない。さらに親の脛を齧るゴミになるだけなのに…


のそりのそりとリビングに行くと丁寧にラップされた朝食が置いてあった。

『レンジで温めて食べてね。今日はお母さんもお父さんも仕事で帰りが遅くなります。

今日も一日頑張っていきましょう!』

「何に頑張ればいいんだよ…」

ぼやきつつ、冷たい朝食をそのまま食べつつテレビをつける。左上に白く午前8:30と表示されている。普通の高校生なら高校で朝活動をしてる頃だ。それなのに俺は1人で家に引きこもっている。

「何で俺、生きてるんだろなぁ…」

自分の無力さに何回も絶望した。最初は自分のことを考えるだけで涙がボロボロ出た。今や上の空で無力なことをただ呟くだけだ。テレビの音と光だけがいきいきとしている。ああ、テレビのほうがまるで命があるみたいだ。いや、この手で電源を切ってしまえば死んだみたいに音は静まる、光は消える。

リモコンに手を伸ばしたその時、

「今日の占いランキング!

今日の運勢第1位は~!じゃじゃん!

獅子座の貴方!気分転換にお出かけするとさらに運気上昇!」とやけにテンションの高い声で自分の今日の運勢を告げられた。リモコンを持とうとした手が止まる。目まぐるしく変わるテレビの映像に目が留まる。普通の占いなら無視してたかもしれない。占いなんて、全くもって当たらないし、なにより証拠や根拠がない、ただのこじつけだからだ。だけどやっぱり自分の星座が1番良いと知ると、すこしばかり占いを信じてみたくなってしまう。思えば、不登校になってから不思議と外に行くことがなくなった。親からは心配をされた。学校は行かなくていいが、社会に出ないで1人になるのはお前の為にならないと。そんなことは知っていた、外に出ようとした、が、なんとなく外に出ることを拒んでいた。そんな俺に占いとやらがきっかけを作ってくれたのか?

「俺は…」

いつもの俺なら、外なんかに出ない。さっさと布団の中に入って寝て、時々起きて、スマホをいじり倒してご飯を貪るだけ。だからこそ、逆に外に出ることにした。こんな俺でも、少しずつでも、変えて行かなくてはいけないとどこかで叫んでる。ようやくその声に応えるような機会が来たのだと思う。確かに他の奴らから見たら、外に出ることくらいでビビってる陰気なやつみたいに見られてるかもしれないけど…と、まだもやもやした心のまま玄関の扉を開く。爽やかな風が俺に向かって吹き込んでくる。暖かな日差しが俺を包み込んでくる。さあ今、不透明な心に一時的な別れを告げよう。


「いってきます」


しっかりと鍵を閉め、深呼吸をして。1歩ずつゆっくりと歩き出す。この決心が合っているのだと思い込ませるために。

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