第4話 米軍反攻

 「頼もしいですな」と太平洋艦隊参謀長のレイモンド・エイムズ・スプルーアンス少将が、たった今真珠湾に入港してきた二隻の巨艦を見て言った。

 「艦隊はいつ出撃できるようになる?」と太平洋艦隊司令長官のチェスター・ニミッツ大将が言った。

 「今年中に、日本海軍の潜水艦の攻撃によって大破サラトガの修理が完了し、ヨークタウン級空母二隻の対空火器の改良工事も完了するので、来年の年始には出撃準備が完了します。」と主席参謀のエドガー・フィールズ中佐が言った。

 「日本海軍に対する本格的な反攻は来年の年始以降か。」とニミッツが言った。

 「来たるべき反攻では我が海軍は空母九隻、戦艦四隻が使用可能です。とフィールズが言った。」

 〈アメリカ海軍編成表(空母機動部隊)〉

  第二二任務部隊

  TF22ー1

 ・正規空母 「サラトガ」「ホーネット」

       「エンタープライズ」

  小型空母 「インデペンデンス」

       「プリンストン」

  戦艦   「ノースカロライナ」

       「ワシントン」

  軽巡   「アトランタ」「リノ」

       「オタホマ」「ダイス」

  駆逐艦   16隻


  TF22ー2

 ・正規空母 「エセックス」

       「バンカーヒル」

  小型空母 「カウペンス」

       「ベローウッド」

  軽巡  「ジュノー」「フリント」

      「ツーソン」「スポケーン」

  駆逐艦  16隻


 「攻める場所は何処だ?」とニミッツが幕僚たちに言った。

 「ガダルカナルです。」と作戦参謀のエドモンド・ハリソン大佐が言った。

 「何故かね?」とニミッツが聞いた。

 「現在、ガダルカナル島では日本陸軍と我が陸軍との間では激しい陸戦が行われていますが、戦況は我が陸軍の圧倒的優勢となっており、このまま行けばガダルカナル島にる日本陸軍は壊滅します。しかし、そうなる前に日本の連合艦隊は動いてくると本官は予測しています。今回の作戦では、ガダルカナル島に押しよせてくると予測される連合艦隊を撃破し、その後に我が軍の空母の艦載機を使って、ガダルカナル島に残存している日本陸軍を攻撃して壊滅させます。」とハリソンが言った。

 「つまり、ガダルカナル島は日本の空母機動部隊をおびき寄せる餌という訳だね」とニミッツが苦笑しながら言った。

 

 「こりゃあ凄い空母だな」と艦政本部総務部第一課長の庭田正三少将が言った。

 新鋭空母「龍鳳」。

 祥鳳型をベースにした祥鳳型の直衛専任艦バージョンとも言える龍鳳型の一番艦が三日前に竣工したのだ。

 「私たちもGFから要望書をもらったときは驚きましたよ。」と実際に工事を担当した横須賀海軍工廠第二室長の齋藤一馬中佐が苦笑混じりに言った。

 「でも、あれもこれもと欲張らなかったおかげで、このサイズの艦としては比較的早めに竣工させることができました。」と齋藤が続けて言った。

 「しかし、このような機能を絞った小型空母の建造ですら我が国は思うに任せないのだな。」と庭田が言った。

 「二ヶ月後には龍鳳型の二番艦も呉工廠で竣工予定ですし、現在、3002号艦の建造も急ピッチで行われているので、米軍の本格的反攻までには、ある程度、空母の数を揃えることができると本官は考えています。」と齋藤が言った。

 この時既に、庭田の頭の中では新鋭空母を含む日本海軍空母機動部隊が、海上を疾駆していた。

 

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