第3話 陸奥の行方
「戦艦陸奥の被害状況について説明します。」と艦政本部総務部第一課長の庭田正三少将が低い声で言った。
「第三砲塔、第四砲塔全壊、第ニ砲塔一部損壊、第七、第九、第一ニ高角砲全壊」と庭田が続けて言った。
「主砲を三基も…」と連合艦隊参謀長の宇垣纏中将が言った。
「それで、この廃艦同然となってしまった戦艦陸奥を艦政本部はどうしようと考えているのかね?」と臨時でこの会議に出席した海軍大将嶋田繁太郎大将が庭田に言った。
「艦政本部では既にこの議題について議論を交わし、戦艦陸奥をどうするべきかという質問に対して三つの答えを用意しました。」と庭田が言った。
「ほう」と嶋田が言った。
「まず、第一の案は戦艦陸奥を廃艦にするという案で、第二の案は戦艦陸奥を空母化してしまい空母機動部隊に編入するという案で、第三の案は今回の大爆発で全壊してしまった、第三、第四砲塔に加え、思い切って、前部の第一、第二砲塔も取り外してしまい、空いた空間に、高角砲、機銃多数を置き、戦艦陸奥を防空戦艦化してしまうという案です。」と庭田が続けて言った。
「第二の案はとても魅力的な案ですな。」と第三航空戦隊司令長官の城島高次少将が言った。
「城島少将の言うとおり、第二の案は非常に魅力的だが、時間が掛かり過ぎるのではないかね?」と宇垣が言った。
「艦政本部の方ではどの案が一番有力視されているのかね?」と宇垣が続けて言った。
「艦政本部では第二、第三の案は時間が掛かり過ぎるとして、第一の案が現実的ではないかと言う意見が大勢を締めています。」と庭田が言った。
「この議題に関して連合艦隊司令部は艦政本部に判断を一任したいと考えているのですが庭田さんはそれでいいですかな?」と宇垣が言った。
「はい、わかりました。」と庭田が言った。
この後、細かい議題を何個か議論した後に会議は閉会した。
天から降り注ぐ陽光を浴び、2隻の巨艦が真珠湾に入港してきた。
エセックス級空母一番艦「エセックス」、二番艦「バンカーヒル」。
今やアメリカ海軍の主力艦に位置づけられている空母の最新型が二隻、真珠湾に、その堂々たる艦容を表した。
日本海軍に対する脅威が、この日、一九四二年九月、突如その姿を表したのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます