第22話 こんな生活はもう嫌だ、私を連れて行け!
「もう嫌だ!こんな生活は!」
テルシオがレカから、この前買い与えていた装飾品等を剥ぎ取っていると、セスタが叫び声を上げた。
魔族やゴブリン等の極悪な亜人、人間の盗賊、略奪する兵士により焼かれた村で、一人泣いてしゃがみ込んでいた少年や少女を拾った。気まぐれだったのかもしれない。手伝いや雑用をさせながら、養ってやった。五人で食卓、食卓はなかったが、を囲んで笑い合って食事をしたはずだった。その時、家族のように笑い合っていたはずだった。そんな家族みんなごっこを、2人も愉しんでいた。
このところの勇者達の不審な動きを、彼らのために心配してくれていたと思っていた。それは全てが、偽物だった。そのことを、一応は分かっていたはずなのに、あらためてセスタはショックを受けた。テルシオが、歩み寄ると、いきなり、両肩に手を置いて、
「私をコパンに連れて行け、そして、私を突き出せ!」
テルシオは、“お前は死にたいのか”と言いかけて、彼女はそれが分かっていると思い、大きな溜息をついて、
「では、ティカルに行こう!」
「それでは、お前が。」
「いいから聞け!」
彼は彼女の肩を両手で掴んだ。
「私はお前の貞節さを話す、お前は私が紳士であったことを力説しろ。そうすれば、私は、罪一等、いや、二等、三等?減じられるだろう。」
「すると?」
希望を覗かせた彼女に、彼は続けて、
「多分、君子として自害する名誉を与えてくれるだろう!」
「私はそんなことを望んではいない!」
「いいから聞け!」
テルシオの迫力満点の顔と声にセスタは黙って、小さく頷いた。
「兄上は、必ず女としてのお前に関心を持つ。お前が処女なら、側室にする、絶対に。そして、私が自害する場に立ち合う時に、お前を同伴する。そういう人だ。お前は微かに、涙しろ。そして言え、好敵手であり、ともに戦った戦友の死に涙しない戦士がおりますでしょうかと。そして、兄上の体の下で喘ぎまくれ、ベッドの上で。いつか、コパンから引き渡しの要求が来るだろう。国のことを第一に考える人だ。お前のために戦争などしまい。しかし、無慈悲に簡単に引き渡しもしない。お前の命の保証を確約させて送りだすか、お前を幽閉することを約束して国内に置くかもしれない。お前の叔父上も、戦争は望まないだろう、国のことを考えれば。それがどちらになるかは半々。そして、どちらにせよ、しばらく経ってから、暗殺されるかもしれないし、自害を強制されるかもしれない。それも半々。しかし、最悪でも、数年間は生き延びられるし、上手く行けば、幽閉されていても、天寿を全うできる。」
彼女は、目を真っ赤にしながら、同時に怒りの炎を燃やして、
「お前を殺して、不名誉な生を選ばせるつもりか?私が他の男の物になっても構わないのか!」
「嫌に決まっているだろう!それでも、少しでも長く、お前には長く生きて欲しいんだ。」
吐き出すようにテルシオが言うと、
「こ、この馬鹿もの。大馬鹿野郎!」
セスタは殴りかかった。
「お前は、私が他の男のものになっても平気なんだ!いつもそうだった、私などはどうでもよかったんだ!」
最初の一撃を、何とか受け止めたテルシオも、無性に怒りが込み上げてきて、セスタに殴りかかった。
「初めて会った時から、お前のことを思っていたのに、お前はあんな女狐の方ばかり見て、他国の姫達のところに行き、婚約者に鼻の下を伸ばしていたではないか。」
そう言って、首を締め上げるセスタの腕と足を外して、逆に足を取って締めつけながらテルシオは、
「婚約者の話で惚気ていたのは、セスタ王女様の方ではないか?私はというと、自分の婚約者とお前と比較して、いつもがっかりしていたものさ。お前は逆に、私を見て、自分の婚約者に惚れ直していたろうが!お前との縁談が、あっさり潰れた時はがっかりしたよ!」
セスタは巧みにテルシオの絞め技を外して、
「お前が真剣だったら、あの縁談は進んでいたぞ!破談になってがっかりしたのは私の方だ。」
彼女は跳び蹴りを食らわせ、そのまま両脚で首を取り、彼を倒して、すかさず腕を足と腕を使ってがっしりと技を決め、締め上げた。
「どうせ私は、可愛げのない男女であったろうよ。姉弟子なのに、必死に可愛く振る舞ってやったのだぞ。それにも気がつかず、お前は馬鹿野郎だ、とんでもない唐変木だ!」
ギリギリと締め上げられる痛みに耐えながら、“ここまで来て、姉弟子かよ!しかも、何だ?嘘ばかり言うな!”と心の中で叫んだ。やや強引に技を外して、蹴りを食らわして、彼女の両脚に技を決め、逆に締め上げる。
「兄弟子に対する礼さえなく、いつも見下していた女に、思いを寄せていたからこそ、何にでもつき合ってやったんだよ。お前は、俺を便利な奴としか思っていなかっただろうが、それでも嬉しかった。大体、戦場で一緒になっても、私を呼びさえしなかったではないか、私は待っていたのに!」
「う、うるさい!嘘をつくな!私の方が、お前が来るのを待っていたのだ。何故来なかった!」
“我の気持も分からず、何だ、兄弟子など、まだ、見栄を張りたいか!”彼の技から逃れて、彼を睨んだ。言い合いを、罵りあいをしながら、最後は、殴り合い、蹴り合いになり、セスタが先に大地に倒れ、その脇にテルシオがしゃがみ込んだ。
「やはり体力勝負だと勝てないな。初めての敗北を認めてやる。」
戦場でのことを言ってやろうとしたが、喉まで出かかって止めた。
「勝ち越してるのは私だ。しかし、本当に強すぎる。もうこっちもギリギリだ。」
二人の下半身は先ほどひきさげられた状態から、戦うために外した状態のままだったことを思い出した。
「その下品なものをにぎりつぶしていれば、苦もなく、初めての敗北を阻止できたな。」
「フン。そんなことをやったら、セスタ王女様の大切な穴に手を突っ込んで、滅茶苦茶にしてやったよ。」
「下品な奴だ。」
「お前から言われたくないよ。」
二人は笑ったが、何となく冷めてしまって、直ぐに下を履き、やるべきことをし始めた。
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