第270話 会議
翌日、会議が行われた。
久しぶりに私も参加する。体は相変わらず絶好調だ。長い間、体調が悪かっただけに、どこも悪いところがないというだけで、めちゃくちゃ体が軽く感じる。
「アルス様、ご復帰おめでとうございます」
会議を始める前に、リーツが言ってきた。
ちょっと涙ぐんでいる。というか、泣き始めた。
「よがっだ、よがっだよおおおおおぉぉぉ」
隣のロセルは号泣していた。
「みんな心配し過ぎなんだよなぁ。わたしは最初から死ぬわけないって思ってたよ。まあ、解毒に成功したのはわたしの魔法があったからなんだけどね」
シャーロットは相変わらずだ。ちょっとドヤ顔している。
彼女がいないと助からなかったのは事実だ。もちろん、毒の魔力水を仕入れてくれたヴァージにも感謝しなければならない。
「みんな、心配かけてすまない。これからはもっと注意して、二度とこのような事にならないようにする」
「そ、そんな……このような事を起こさないようにするのは、僕の仕事です! もう二度と、アルス様を危険な目に遭わせはしません。誓います」
リーツは責任を感じているのか、そう言ってきた。彼にはほかにも色々仕事があるので、私の護衛だけに気を取られるわけにはいかないだろうし、仕方ないと思うが。
自衛の心は常に持っていないと、この世界では生きていけないだろう。日本みたいに平和な世界ではないのだから。
「さて、それでは会議を始める」
私がそう宣言し、久しぶりの会議を始めた。
議題はいつも通り領地に関するちょっとした問題や、領民からの陳情をどうするかなどだった。
家臣たちが話し合って、正しい答えを導き出していく。
私は聞くだけになることが多いが、最終的な決断は下していた。
「そう言えば、シャドーは今どうしているの? まだ暗殺者のゼツだっけ? を探してるの?」
ロセルが、リーツに尋ねた。
ファムたちは私に毒を盛った暗殺者を捜索していた。
ちなみに鑑定結果ではナターシャと出ていたが、暗殺者としてはゼツと名乗っているらしい。ファムも本名は違ったし、本名と呼び名を変えるケースは多いのだろう。
今後はゼツと呼ぶ。
「まだ捜索中だよ。ローベント家の当主を暗殺しようとした相手を放っておくのは、ローベント家のメンツにかけて許せない。それに、奴はアルス様の鑑定の眼を誤魔化す何らかの方法を使って、アルス様に近づいたらしい。サイツがその方法を知っている可能性がある以上、こちらもその方法を知らなければ、アルス様のお力が使いにくくなる。ゼツを捕らえて聞き出すのが、一番手っ取り早い」
リーツが説明した。
若干私怨も入ってる気がするが、確かに一理はある。難しいかもしれないが、ゼツを捕まえ、鑑定結果の偽装方法を聞き出すことができれば、今後人材発掘もしやすくなる。
「うーん、捕まえられるかな? でも、捕まえた方がいいのは事実だし、捜索はした方がいいよね。シャドー全員で探すと、前みたいに街で工作活動を行なわれかねないから、人員を減らした方がいいと思うよ」
「それはそうだね。指示を出しておくよ」
ロセルの提案にリーツは許可を出した。
ゼツについて見つかると良いのだが。
偽装が解けた後の鑑定結果も高く、有能な人物なのは間違いないから、もしチャンスがあれば家臣に……というのは流石に考えが甘いか。
その後、特に変わった議題も上がることなく会議は終了した。
体調は完全に戻っていたので、特に問題なくこなすことはできた。
元々そんなに体力使うわけでもないしな。
こうしてローベント家は危機を何とか脱して、日常に戻ることができた。
――数日後。
その日もいつも通り朝起きて食事を取り、書斎で他家からの書状に対する返答の書状を書いていた時だ。
そんな時だった。
「アルス様、報告があります!」
リーツが慌てた様子で書斎に入ってきた。
こんな慌てている時は、大体悪い報告だ。そうに違いない。
サイツが攻めてきたとか、家臣の誰かが何かをやらかしたとか、私みたいに毒を受けてしまったとか。
悪い想像が一気に浮かび上がってくる。
しかし、その想像は全て間違いだった。
「シンから飛行船が完成したとの報告がありました!」
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