第255話 宣言式
翌日。
宣言式が行われた。
場所はアルカンテス城の前である。
アルカンテス城には、演説などを行うためのバルコニーが設置されている。
クランはそのバルコニーに立って、宣言をするようだ。
かなり高い位置にあり、見下ろす形になる。
バルコニー席の下には大勢の貴族たちがいた。
クランが宣言をするすぐ近くまで、アルカンテスの領民は入ることは出来ない。
その代わり、音魔法でクランの言葉が町中に届くようにしていた。
しばらく待っていると、クランがバルコニーの上に立った。
いつもクランは豪華な服を着ているのだが、今日はいつも以上に高価な服を着ていた。
頭に王冠を着けている。
「おお……」
「代々ミーシアン国王が被っていた、伝説の王冠……!」
「サマフォース帝国が出来てから着用を禁じられてたが……この目で見られるとは……」
何名かの貴族たちが、クランの姿を見て感嘆していた。
そんな王冠があったとは初めて知った。
今後はクランは、ずっとあの王冠を被るのだろうか。
「皆様静粛に! 国王陛下からの宣言をお聞きください!!」
クランの隣にいた側近のロビンソンが、大声でそう言った。
ざわついていた貴族たちも、その声を聞き静まり返る。
完全に静かになると、クランが口を開いた。
「今日という善き日に皆が集まってくれて、大変嬉しく思う。昨年までこのアルカンテスは我が弟の手に堕ちていたが、こうして取り返すことができ、今日を迎えられた。それも皆の尽力があってこそだ。今後も皆の尽力を期待している」
最初は穏やかな口調でクランは話し始めた。
「アンセル王国という悪しき侵略国家が、他国を侵略しサマフォース帝国を建国してから、二百年以上の時が過ぎた」
徐々に厳しい口調に変わっていく。
サマフォース帝国に対して強い恨みがあるようだった。
「200年前我々から様々な物を奴らは奪っていった。大勢の人が殺されたり攫われたり、財宝、食料も奪われた。国王の位もそうだ。戦に負けたミーシアンは最大の屈辱を味わったのだ。だが、もはや皇帝家に力も正義も存在しない。奪われた誇りを奪い返す時が今来たのだ」
クランは、もしかすると単純に先祖の無念を晴らしたいと思って、独立をしようとしているだけなのかもしれない。
前日は確かに平和のために独立を宣言すると言っていたが、それが本当だとは私には思えなかった。
「ミーシアンはサマフォース帝国から独立し、これからはミーシアン王国となる! そして、私は今日よりミーシアン国王に即位する!」
クランは高らかにそう宣言した。
その宣言と共に、貴族たちが歓声を上げた。
帝国暦二百十三年 五月二十一日。
クラン・サレマキアが、ミーシアン国王に即位。
ミーシアン王国が復活した。
〇
その後の祝宴は、特に変わったことはなく終わった。
ほかの貴族たちに話しかけられまくって、その対応をする必要はあったが、いい加減慣れていたので、そこまで疲れることなく無難に終わらせることが出来た。
そして翌日。
「無事許可を貰いました!!」
キーフが明るい表情でそう言ってきた。
親に仕官していいか聞きに行き、許諾を得ることに成功したようだ。
こんなあっさり許可を出すとは、結構放任主義だな……
ただ、出発に際して結構お金を貰ったらしい。
お金は払うから、後は勝手に育ってくれ、って感じで育児をしているのだろうか。それはそれでだいぶ問題ではあるが、それのおかげでキーフは絵を描くことが出来たんだろうし、一長一短かもしれない。
「それでは私たちと共にカナレに行こう」
「はい!」
私たちはキーフを引き連れアルカンテスを後にした。
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