第251話 人材

「いや~、植物園楽しかったですわね!」


 私たちは植物園に行った後、町を歩いていた。

 リシアはいつもより興奮している様子だった。


 植物園は、アルカンテスの北地区にあった。

 かなり大きな建物である。人が多く集まっており、人気も結構あるようだった。

 名前はそのまま、『アルカンテス植物園』というらしい。


 訪れていた人々を鑑定してみたが、高ステータスの人物は見つからなかった。

 そう簡単に見つかるものではない。

 もっと大勢の人間を鑑定するしかない。

 アルカンテス滞在中に見つからないことも十分あり得るので、過度な期待はせずに鑑定をして行こう。


 しかし、異世界の技術力で植物園の経営など出来るのだろうか……と思って入ったが、魔法の力できっちりと温度管理されており、ミーシアンには群生していない植物も展示されていた。


「中でも、ホーリーフラワーは圧巻でしたね~あんな巨大な花がこの世にあるなんて……」


 植物園には目玉の花があり、それがホーリーフラワーだ。

 木ぐらいの大きさの花を咲かせるとんでもない花である。

 色は花弁によって違う。さらに光の粉をキラキラと漂わせており、かなり幻想的な花である。

 正体は花ではなく、キノコらしい。キラキラしているのは、胞子のようだ。

 普通はそこまでデカくはならないが、条件を満たせば大きくなるとの事。

 条件に関しては色々あるようで、説明書きには書いてなかった。


「確かにあれは綺麗だったな……でも、実はキノコってのも衝撃だった」

「そ、それは忘れさせてください」


 リシア的に実はキノコだという事実は、お気に召さなかったようだ。


「え!? あれってキノコだったんですか?」


 ブラッハムが驚いたような声をあげた。


「隊長……説明読んでなかったんですか……」

「いや~見るのに夢中になってて。でもキノコならあれ食べられるのか?」

「毒があるらしいですよ。というか、普通食べたいって感想出ないでしょ……」


 ブラッハムの言葉に、ザットは少し呆れていた。


「次はどこに行きましょうか? 今度はアルスの行きたい場所にしましょう!」


 リシアがそう提案してきた。


「うーん、そうだな……」


 アルカンテスには観光しに来たわけではないので、特に行きたい場所は決めてなかった。

 あまり詳しくないので、少し悩む。


「とりあえず、市場に行ってみないか?」


 悩んだ末、そう結論を出した。

 アルカンテスの市場は、ミーシアン一の商業都市であるセンプラーほど盛り上がっているわけではないが、それでも州都だけあって、色々なものが売られている。

 人も多いし、鑑定も出来るだろう。


「分かりました。それでは市場に行きましょう!」


 私たちは植物園を離れ市場に向かった。


 アルカンテスの中央に城はあるが、市場はその近くにあった。


 市場には多くの露店が立ち並んでいた。

 大勢の人で賑わっている。

 まるでお祭りのような雰囲気だった。


 鑑定しながら市場を見て回る。


 50人くらいはすぐに鑑定したが、やはりそう簡単に優秀な人材は見つからない。


 流石に初日で見つかるわけないかと思いながらも鑑定を続ける。


 ふと、市場の隅に目が行った。

 市場は賑わっているが、隅っこの方には客のいない店もある。


 絵を売っているようだ。

 自分で描いた絵なのか、人が描いた絵なのかは分からない。


 売っているのは少年だった。

 年齢は今の私と同じくらい。

 かなり整った顔をしており、将来はイケメンになりそうだ。


 絵は結構上手で、商品として十分通用するレベルだったが、それでも売れている様子はなかった。


 まあ、絵は高価なものだ。

 一日に一枚でも売れれば良いという感じで、売っているだろう。客が大勢いる方が逆に不自然だ。


 私は絵を売っている少年を鑑定してみた。


「!?」


 キーフ・ヴェンジ 13歳♂

 ・ステータス

 統率 32/89

 武勇 46/85

 知略 55/98

 政治 56/95

 野心 33

 ・適性

 歩兵 A

 騎兵 C

 弓兵 A

 魔法兵 C

 築城 C

 兵器 C

 水軍 A

 空軍 A

 計略 A


 帝国暦百九十九年十二月二十一日、サマフォース帝国ミーシアン州アルカンテス郡アルカンテスで誕生する。両親は健在。兄が四人。姉が二人いる。全員健在。マイぺースな性格。甘い物が好き。野菜は苦手。絵を描く事が趣味。優しい女性が好み。


 現在値はそれほど優秀ではないが、能力の限界値は全て高水準。

 間違いなく凄まじい才能を持った人材だった。


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