第246話 手がかり
それから、リオについての調査をリーツは始めた。
まだ数日しか経っていないので、進展はない。
リオは、レンとクライツとさらに仲良くなった。城の者たちも好意的な者が多く、リオも人間に慣れるのが早い。
数日でリオは人気者になっていた。
もうこのまま飼い続けても良さそうだな。理由は気になるが、わからなくても問題はない。
そんなことを思うようになっていたが、リオについての手がかりが意外と早くもたらされた。
その日は、カナレ城で定例会議が行われる日だった。
いつも通り家臣たちが集まり、報告をして行く。
そして、ブラッハムが報告を始めた。
現在彼の率いる精鋭部隊は、カナレの治安維持活動を手伝っていた。
元々憲兵がカナレの治安を守っていたが、既存の憲兵だけでは力が足りないと、ブラッハム達の力を借りている形だ。
最終的には、憲兵の数をさらに増やし、ブラッハムには別の仕事を任せるつもりだと、リーツは言っていた。
「えーと、最近町で活動していた犯罪組織を摘発しました。商人に扮していて、普通の正規の品に交えて、自分たちで盗んだ物を売ってた狡賢い連中です。摘発したのは良いんですが、ちょっと問題があってですね……」
たどたどしい口調でブラッハムが報告する。
会議で発言することはまだ不慣れのようだ。
「盗品などを押収したのですが、その盗品の中に動物がいまして……その動物が数匹、逃げ出してしまいました……」
「動物? 逃げ出した動物に危険性はないのか?」
リーツがそう質問した。
カナレにおいて動物の取引自体は違法ではない。
ペットを飼うという文化もある。
だが毒を持っていたり、人間を積極的に襲ったりする危険性の高い動物は、カナレに持ちこむことが禁止されている。
無論、飼ったり売買したりするのも禁止だ。
「いえ、動物は危ない奴じゃないみたいです。取引禁止の動物ではなく、どこかで飼われてたペットを盗んで売ってたみたいですね」
「それならまだ良いんだけど……でもペットなら早く見つけてあげないと」
「そ、そうですよね。カナレの外に行ってしまったら、探しようがないですし。盗品の管理が甘かったです……」
「過ぎたことは悔いても仕方ない」
悔しがるブラッハムをリーツは慰めた。
「逃げた動物はどんな特徴をしていたんだい?」
「えーと、紙に特徴を描いたので、お配りします」
ブラッハムはそう言って紙を配っていく。
この絵を街中に貼って、目撃証言を募ったりもしているらしい。
紙を確認する。
全部で三枚。
逃げ出した動物は3匹のようだ。
一枚目は蛇のような動物。
二枚目は猫のような動物だった。
どちらも見たことがない。
わざわざ盗んで売るくらいだから、珍しい動物なのだろう。
三枚目も確認する。
「……こ、これは」
モフモフの毛、太い尻尾。
見覚えのあるフォルムだった。
絵はカラーではなく白黒だ。
体毛の色などの情報は、文字で書かれている。
確認すると、体毛は青と記載されていた。
「アルス様……これ……」
隣にいたリーツも心当たりがあったようだ。
会議にはリシアや、ムーシャ、ロセルもいた。全員少し動揺している。
「あ、ああ……リオの特徴と一致している……」
私は動揺しながら返答した。
まだ確定したわけではないが、ここまで特徴が一致しているとそうだとしか思えない。
リオは、ミーシアンにはいないはずのキングブルー種だ。
盗まれたペットが城に迷い込んだのだとすると、合点もいく。
もし、本当にリオが盗まれたペットならば、持ち主に返さないといけない。
正直、違って欲しいという気持ちもある。
私自身リオを飼いたいという気持ちは強くなっていたし、何より一番仲が良くなっているレンとクライツに、どう説明すれば良いのか分からない。
でもまあ、こればかりは仕方のないことではあるか……
「あれ? もしかして心当たりある動物がいましたか?」
「この紙に書かれている動物だが……この城で保護しているかもしれない」
「マ、マジですか? み、見せてください!!」
ブラッハムにそう頼まれた。
断ることはできない。
「分かった。会議が終わり次第、一緒に見に行こう」
「はい!」
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