第216話 面会
私が傭兵団に会うと返答した後、すぐに傭兵団の団長と会うことになった。
リーツが傭兵団の団長をカナレ城の中に案内してくる。
屈強な体の30前後の男が入ってきた。
髭面で、顔立ちもかなり濃ゆい。
ぱっと見では強そうに見える。
もちろん本当に強いかどうかは、鑑定をしてみないと分からないが。
「傭兵団グランドールの団長、ウルバード・セオンだ。よろしく」
表情を変えずに男は言った。
私も挨拶を返す。
そのあと、ウルバートは傭兵団としての実績を説明し始める。
何の戦いに参加したとか、どのくらいの活躍をその戦いでしたとかだ。
本来ならこの実績を聞いて、傭兵団としての実力を判断するのだろうが、私には鑑定スキルがある。
団長であるウルバートの能力を見れば、ある程度傭兵団の強さを測ることができるだろう。仮に兵の質がほかより高くても、指揮するものが駄目なら、強くはないだろうからな。
話は半分聞き流して私はウルバートを鑑定してみた。
現在値が統率が65、武勇が71、知略55、政治45。
限界値とは大きな差はない。
適性も特別優れたものはなかった。
別に無能というわけではないのだが、リーダーとしては特に秀でているわけでもなさそうだな。
彼の部下に能力が高い者がいる可能性もあるが、その者が傭兵団のリーダーになるわけではないし、彼の率いる傭兵団は特別強力な存在とはならないだろう。
まあ、だからといって要らないというわけではない。
戦いは質も大事だが、やはり数が一番重要だ。
味方の足を引っ張る無能なら、流石に要らないが、能力的には無難な物は持っているし、契約する価値はあると思う。
あくまで値段次第ではあるが。
高すぎる場合は、契約は見送った方が良いだろう。
「契約金はいくらになるだろうか」
「こちらから提示する金額は一月金貨15枚だ。金とは別に食料や住居も提供してほしい」
「15枚か」
最近好景気で税収は上がってはいるので、出せない金額ではない。
確か兵が200人くらいはいたはずなので、一月金貨15枚はそこまで高くはないような……ただ、食料は別に用意との話と考えると、払い過ぎの様な気もする。
「アルス様、少しいいですか?」
横で話を聞いていたリーツが、小声で話しかけてきた。
「彼の能力はどうでしたか?」
「悪くはないが、特筆して高くはなかった」
「そうですか……となると、今回は見送った方が良いと思います」
「そうなのか? 兵力の増強は必要なのではないか?」
「増強すべきというのは間違いありません。しかし、傭兵団は何も一つだけではありませんから」
「ほかにも傭兵団が来るということか?」
「はい。今、カナレは傭兵団からすると売り込みやすい相手だと思われていると思います。景気が上向きで金を持っていそうであり、あまり仲の良くないサイツ州との州境にある郡ということで、戦が起こる可能性も高そうである。二つの要素を考えると、ほかの傭兵団が近いうちに売り込みに来ても、不思議ではありません」
「なるほど……」
そう言えばリーツは昔傭兵団に所属していたんだったな。
この辺の傭兵事情にはかなり詳しいのかもしれない。
ここは素直にリーツの話を聞いていた方が良さそうだな。
まだほかに傭兵団が来るというのなら、焦って契約する必要もないだろう。
「済まないが今回は契約は見送らせてもらう」
「……そうか。一週間ほどこの町に滞在するつもりなので、気が変わったら言ってくれ。ラーベクという宿屋に宿泊している」
私の返答を聞いて、ウルバートは少し残念そうな表情を浮かべた後、そう言ってカナレ城を後にした。
それから、家臣たちと再度話し合ったが、今回は見送った方が良いという結論は変わらなかった。
〇
数日経過。
リーツの予想した通り傭兵団がまたやってきた。
しかも、同時に3組ほどだ。
リーツの読みは完全に正しかった。流石と言うべきか。
人数の規模は、最初にきた傭兵団グランドールよりどれも少なく、50人程度だった。
契約金も人数が少ないので、その分安めだった。
最初二組の団長を鑑定した。
そこそこの能力は持っていたが、やはり飛びぬけて強くはない。まあ、そこまで優秀な傭兵団なら、すでに名前が売れているだろうからな。まだ、名前は売れていないけど、能力は高い、という傭兵団はそうそうないだろう。
と思って私は三組目の鑑定を行った。
「傭兵団バングルの団長、ロック・シードルです」
整った顔のオールバックの男だった。
年齢はまだ若そうである。
私はロックを鑑定した。
ロック・フランバルト 27歳♂
・ステータス
統率 77/85
武勇 63/70
知略 69/73
政治 55/62
野心 50
・適性
歩兵 B
騎兵 A
弓兵 C
魔法兵 D
築城 C
兵器 D
水軍 D
空軍 D
計略 B
結構いい能力値だ。なぜか名乗った姓と鑑定の姓が違うのが気になるが。
まあ、名の方は一緒なので、そこまで不思議な事ではないかもしれない。姓は家庭の事情とかでも変わるものだ。シャドーの者たちなど、鑑定名と名乗った名前が全く一致しなかったからな。
この能力値なら有能といっていいだろう。
特に統率の限界値が85もある。これは中々見ない数値だ。
統率力の高い者に率いられた部隊は当然強くなる。
まだ50人程度の比較的小規模な傭兵団ではあるが、ポテンシャルは高そうだ。
それから、能力だけでなくロックがどんな人間かも鑑定してみた。
出身は、アンセル州みたいだ。帝都がある州である。
アンセル北西にある、バングル郡出身だそうで、傭兵団の名前はそこからとっているのだろう。
それ以外に特に変わったところはないが、やたら兄弟が多いのが気になった。
兄が五人いて、弟が一人、姉が二人いて、妹が三人いるらしい。ロックを含めると12人兄弟ということになる。
兄が二人、妹が一人すでに他界しているようだ。
結構変わった家庭で生まれたようだ。
彼が名乗った姓と、鑑定で表示された姓が異なっていたのと、もしかしたら関連性があるかもしれない。子供が多すぎたので、他所の家に養子に出されたとか。
まあ、何にせよ特に問題視すべき事情がある感じじゃない。
そのあと契約金について尋ねた。
月金貨5枚とそれほど高い値段ではなかった。
その程度の値段なら、雇うことも全然可能である。
この人材を逃すわけにはいかない。
「金貨月5枚なら出せる。ぜひ、あなたの傭兵団と契約をさせて欲しい」
「……契約してくださるのですか?」
ロックは嬉しいというより、困惑したような表情を浮かべた。
「あ、いや、失礼いたしました。あまり実績のない傭兵団でしたので、各地で断られ続けており……本当に契約していただけるのなら、誠に嬉しいです」
実績があまりないのか。それにしては、ロックの能力値は高いけどな。
結成したばかりの傭兵団なのだろうな。
「契約が続く限り、ローベント家のため我が剣を振るうことを誓います」
深々と頭を下げてロックは宣言した。
なんと言うか、あまり傭兵っぽくない振る舞いだ。
いやまあ、傭兵団の中にも、貴族崩れの人とかもいそうだし、一概に言うのも間違っているかもしれない。
「よろしく頼む」
こうして傭兵団バングルと契約を結ぶことになった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます