第203話 会議②
会議は続いてほかの郡との関係作りに移る。
カナレの西側には、サイツ州がある。
サイツとはあれだけ派手にやり合ったばかりなので、簡単には仲直りは出来ない。どうやらサイツ州はカナレを手中に収めたいようで、和解するなら、サイツに付く以外の方法はないだろうが、それをする気はさらさらなかった。
サイツとの関係は余程のことがない限り、改善不可と考えていいだろう。
ミーシアン州内のほかの郡との関係を、もっと積極的に築くべきだという流れになった。
ミーシアン州の中で、大きな力を持っている郡はアルカンテス、ベルツド、マサ、センプラーの四つ。
特に、中央都市アルカンテスと、海に面し経済力が非常に高いセンプラーは、強い力を持っている。
アルカンテスは現在クランが治めており、センプラーはクランの子供レングが治めている。
クランとはある程度友好的な関係を築いている。レングには特別好かれてはいないだろうが、レングはクランの意向にある程度従うだろうから、そこまで友好的になる必要はないかもしれない。
あくまで今の話で、これから先のことを考えると違う。レングはクランが死去した場合は、次期ミーシアン総督になるだろう。
年齢的にはレングの方が近いので、クランよりレングとの付き合いの方が長くなる可能性が高い。
先のことを考えるとレングと関係性を築くべきだろう。
割と単純な男だったので、信頼を得るのはそこまで難しくはないかもしれない。
ベルツドを治めているルメイルとは、強固な関係を築けている。
マサ郡長だけは、ほとんど会ったこともない。
もちろん仲も良くない。
カナレ郡とマサ郡は、比較的近い位置にある。
マサと仲良くできると、交易関連でも軍事的な協力を考えても、メリットは多いだろう。
「マサ郡と友好的になるには、具体的に何をすればいいだろうか」
私の質問に答えたのはリシアだった。
「パーティーにご招待するとか、もしくはマサ郡長が参加しているパーティーに参加するとか、贈り物をしたり、マサ郡長と仲のいい人に取り持ってもらったりするのもいいですね。一番は婚姻関係になることですがそれは難しいですわね」
私はすでにリシアと結婚しているし、弟と妹もまだ幼く結婚できるような歳ではない。
マサ郡長の交友関係は知らないが、ルメイルとはそこそこ親しかったんじゃなかろうか。
あとはクランだ。マサ郡長は一貫して、クラン側についていた。親しくないとは思えない。
ただ、こちらからマサ郡長と仲良くしたいので手伝ってくれませんか? と書状を送るのはちょっと失礼な気がする。
ルメイルかクランがパーティーを開いたりしたら、そこでは積極的に参加をしてマサ郡長ともっと知り合ってから、それから贈り物などを送って、友好的になりたいという意思を示すのがいいだろう。
これは推測だが、マサ郡長も私の腹は探りたいとは思っているはずだ。
今の私は、ミーシアン州ではかなりのスピードで出世している、若手の貴族ということで、ある程度注目はしているだろう。
もちろん、ポジティブな見方をされているとは限らない。私がどういう行動を取るのか分からないので、警戒心を強めているかもしれない。
それでも、私を眼中に入れているのなら、関係を築きたいとは思ってくれるはずだ。
外交に関しては情報を収集しておくのも重要ということで、シャドーを使ってミーシアン州の郡長たちの情報を収集してもらうことにした。
工作したりするよりは楽な任務なので、シャドーならきっちりこなしてくれるだろう。
今回の会議はとりあえず終了した。
しばらく私の業務は、人材の発掘をすることだ。
パーティーなどが開かれたら、そこに出席する必要もあるだろう。
また、シンとの飛行船についての話をすぐに進めたいので、城に一旦来るように、その日のうちにシンに対して書状を送った。
その数日後。
シンがカナレ城に姿を現した。
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