第193話 戦闘

 シャーロット達の元に、敵兵が接近してきていた。


 敵兵の数はそれほど多くはないが、それでもシャーロット達はかなり少数だったので、数倍はいる。

 まともに戦っては勝てないくらいの戦力差だ。


 シャーロットは手持ちの、小型触媒機を準備する。


 大型触媒機は、すでに水魔法を使うため、準備を終えている。


 これを使うわけにはいかなかった。


 敵が対岸に到着した。


 シャーロットは、炎魔法のファイアーバレットを敵兵達に向かって使用した。


 炎の弾が飛んでいき、着弾した瞬間爆発した。


 大型触媒機を使ったほどに威力は出ないが、かなりの爆発が発生する。


 敵兵が何十人か吹き飛んだ。


 かなり酷い光景を目の前で見たはずだが、敵兵は怯まず向かってくる。


 次々と川に入ってくる。


 川のお陰で敵兵の速度が遅くなり、狙い打ちが出来、どんどん減らしていった。


 しかし流石に全員は討ち取ることはできず、何人か上陸されてしまう。


 シャーロットに同行する兵には、実力のある兵が選ばれたので、シャーロットを狙ってくる敵兵を、食い止めることはできていたが、次々に敵が上陸してきて数が増えだすと、不利になってくる。


 乱戦になると、味方を巻き込む恐れが出てくるので、シャーロットも魔法を使用がし辛くなる。


 威力を抑えて撃つことはできるが、それでもきちんとコントロールしなければ、味方に当たってしまうので、どうしても慎重になってしまう。


「や、やばいかも……」


 かなり緊迫した状況に、シャーロットも流石に危機感を感じる。


 シャーロットの生死は、今ではシャーロットだけの問題ではない。

 彼女が死ねば、カナレ軍に勝ち目はなくなると言っていい。


 自分が死ぬのは怖くないと、シャーロットは思っていたが、自分が死ぬことで、アルスたちに危機が訪れることは、怖かった。


(何とかしないと……でも、今は魔法が使えないし……)


 状況の打開策を考えるが、シャーロットは頭を働かせるのは、あまり得意ではない。


 どうするか焦っていると、敵が近くまで来た。


「シャーロットさん!!」


 早口で呪文を唱えて、近くにいた兵士を魔法で撃つ。


 咄嗟のことだったので、威力調整が少し上手くいかず、強くなりすぎたため、自分も巻き込まれて、吹き飛んでしまった。


 大怪我はしなかったが、足を擦りむき、すぐには立ち上がれなくなる。


 シャーロットが座っている間も、敵兵は次々にやってくる。


 これは本格的に死んでしまうかも。


 そう思った時、


「うおおおおおお!! 急げぇえええ!!」


 叫び声が戦場に響いた。


 ブラッハムが遅れて援軍に到着したようだ。


 馬に乗ったブラッハムは、敵兵の元に迅速にたどり着くと、矛を振り回して、敵兵を斬り殺していく。

 普段は槍を持っているが、馬上にいるときは矛を使用していた。


 ブラッハムと一緒にきた兵士たちも、カナレ軍の中では能力の高い者が多いので、敵兵を圧倒する。


 援軍が来てもなお、カナレ側の方が少しだけ兵数が少なかったが、兵の質で上回り、優勢になっていく。


 シャーロットも炎魔法を使用し、敵兵を着実に焼き殺していった。


 結果、全滅する前に、敵兵は撤退を決意し、逃げ出していった。


 シャーロットは間一髪で、危機を逃れる事ができた。


「ワハハハハハハ!! 俺のおかげで完全勝利したな!!」


 援軍にきたブラッハムは高らかに笑い声を上げる。


「えーと、君ブラッハム君だったね」

「そうだ。俺のおかげで命拾いしたな!」


 と言うと、シャーロットはブラッハムの股間を思いっきり蹴った。


「はぅ!?」


 いきなり急所を狙い打ちにされ、内股になって、ブラッハムはしゃがみ込む。


「遅いんだよ援軍に来るのが。何してたの」


 あまり怒らないシャーロットだが、珍しく頭に来ているようだった。


「え、えーと……その……ちょっとだけ余裕ぶって移動してたというか……まあ、大丈夫かな〜って思って」


 基本的に大きな態度のブラッハムだが、シャーロットの迫力に押されて、縮こまる。


「はぁー。まあいいや助かったし。君も頑張って戦ってたし、チャラだね」

「あ、ありがとうございます」


 なぜかお礼をいうブラッハム。


「さて、これで心配は無くなったし、ちょっと休憩……」


 戦いで精神的に疲れたので、座って休憩をしようと思ったら、


「シャーロットさん! 本隊から連絡が来ました!! 水魔法を使えとのことです!!」





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