第165話 人材募集

 人材発掘をしばらく積極的に行っていくという方針を固めたが、それ以外にも来るべき戦に備えて、準備を行う必要があった。


 兵を多く動員するには、金と食料など物資が当然多く必要になる。また、兵を動員するだけでなく、魔力水など戦略資源も多く集めないといけない。


 ただ、飛行船の研究のために金を払った分、集められる兵や物資は少なくなってしまうだろう。動員する兵力が少なければ、クランの評価は下がってしまう恐れがある。まあ、戦場での働きで巻き返せばいいだけのことではある。


 数を増やすだけではなく、兵の練度も上げる必要がある。

 リーツたちに、訓練を任せる事にした。


 そして、人材募集の看板を見てきた者たちの鑑定を私は行う事になった。


 看板の効果はあったようで、それなりの人数、仕官希望者が集まってきた。


 集まってきた者たちの身分はさまざまで、没落貴族の子供であったり、町人であったり、農民であったり、元傭兵で今は用心棒をしている男だったり、狩人だったり。


 基本的に私が鑑定スキルを使って鑑定したら、その場で結果を伝えずに、あとで結果を伝えるから、数日後また来てくれと言って、一度帰らせる。


 看板に、領主には人の才を見ただけ見抜く力があると書いていたようだが、それでも何もせずに見ただけで帰らされるというので、不満を持った志願者もいた。もしかしたら、形だけでも、何かテストみたいなことをした方が良かったのかもしれない。


 まあ、私は現在の実力ではなく、潜在能力を見て判断するので、何であいつは良くて、俺は駄目なんだ、というような非難を受ける可能性もあるので、どっちがいいかは一概には言えない。


 初日は100人以上鑑定して、かなり目を酷使したのだが、これという人材は来なかった。


 70台が複数ある、それなりに優秀な者はいて、雇うかどうか悩んで、リーツたちとも相談したが、飛び抜けて優秀ではないという点と、魔法の適正はあまり高くなかったということで、今回は見送る事になった。


 もしかしたら、今後領地の規模が大きくなったら、今度はこちらからオファーすることもあるかもしれない。その時、受けてくれるかは分からないが、顔と住んでいる場所はしっかりと記録しておいた。


 今回、鑑定をしていて気になったことだが、来た者たちが男ばかりだったという点である。


 女性は、接近戦などにおいては、男には基本的に敵わないが(例外もいるが)、魔法においてはシャーロットのように、凄まじい才能を秘めているものがいるかもしれない。


 頭の良さや、政治力なども、男女関係なく高い者は高い。優秀なら女性でも、家臣にしていくつもりだが、中々世の中の風潮が、女性は家庭を守り、男が仕事をするという感じになっているので、志願して来るものが全然いない。


 看板には誰でもいいと書いてはあるが、女性もOKみたいな文は入れていない。

 私としては、「女性を含め」誰でもOKという意味だったのだが、自動的に男なら誰でもOKと、この世界の人たちは思ってしまっているのかもしれない。


 ちょっと面倒だが、看板の文章に女性でもOKという文を加えてもらった。


 これで女性も来るようになってくれればいいが。



 それから、数日間鑑定をしていったが、家臣にしたいと思うほどの人材は中々現れてくれない。


 目もだいぶ酷使して、正直キツくなってきた。

 一旦中断も考えたほうがいいかもしれないと思ったが、諦めずに人材発掘を続けた。


 人材発掘開始から、ほぼ一ヶ月近く経過。

 何日か休みを入れたが、鑑定を何度もしていったため、目は疲れ切っている。これ使いすぎたら失明したりしないだろうな? 正直ちょっと不安である。


 現時点で、視力が低下してきた、とはなっていない。視力検査はないが、はっきりくっきり裸眼で見ることができる。


 肝心の人材であるが、まだ誰も発掘できていない。こんなに断っていたら、厳しいって噂になって、誰も来なくなるかもしれない。そろそろ、無理矢理でも誰か取ったほうがいいかもしれない。


「今日は40人です」


 城の使用人がそう伝えてきた。

 今日はあまり多くないな。これは楽できそうだ。


 全員を一度部屋の中に入らせる。


 相変わらずほとんど男だが、二人女性がいた。ちょっとずつ女性も来るようになっていた。


 最初、簡単な挨拶をした後、早速鑑定を使って見ていく。


 髪が真っ赤で、背の高いやたら目立つ男を、一番最初に鑑定してみた。


 お、中々いいステータスだ。

 名前はザット・ブロズド。年齢は31歳

 武勇が81と中々強力だ。知略と政治がどちらも70台と悪くない。統率は51であまり兵を率いるのは得意ではないようだ。

 野心が56と若干高い気がする。

 現在値の能力が限界値とほぼ一緒で、鍛錬を積んできたのだという事が窺える。


 適正は、歩兵がAと非常に高い。ほかはCとDだった。

 魔法はあまり得意ではないかもしれないが、それでもこれだけ好能力値なら雇ってもいいだろう。


 初めて募集から中々優秀な人材を見つけることが出来て、いい気分でほかの人材も見る。


 ただ、そう上手くは行かず、やはり中々優秀な人材は見つからなかった。


 四十人目最後の人材は子供だった。私と同じくらいの身長である。


 パッとみ男か女かわからない容姿の子だ。髪が短く、胸の膨らみがまるでないので、男ではあると思うのだが。


 鑑定してみたら、違った。女の子だった。

 ムーシャ・トリックという名前らしい。年齢は十六歳と意外と高かった。


 肝心のステータスは……

 お、この子も悪くない。

 統率、武勇、知略、政治の限界値がどれも70台だった。

 野心は32とそれほど高くない。

 現在値はどれも40台なので、現時点の能力はあまり良くない、成長に期待だ。


 しかし、女性でこの武勇は珍しい。ミレーユみたいに、デカくて強そうというわけでもないのに。

 と思って、適性を見てみると、魔法兵適性に「A」と書かれていた。

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