第166話 新しい家臣

 今日、募集に応じてきた人材は一度帰らせた。


 その場であっさりと決めると、不採用の人たちから余計な反感を買う可能性があるし、一応家臣たちとも話し合いたい。


 ただ、ザットとムーシャは家臣にすることになるのは、ほぼ確定していた。


 特にムーシャは魔法適正Aである。

 今一番欲しかった人材だ。


 そのあと、時間をとって、リーツたちと話し合いをする。


 戦の準備に関して、リーツに任せっきりになっている感じなので、かなり忙しいようで、中々時間が作れないのだが、ようやく時間が空き話し合いを始めた。


 私は、ザットとムーシャについて、ざっと説明をする。


「ついに、魔法が得意な人材が見つかりましたか! やりましたね!」

「優秀な魔法兵が一人でもいると、戦の戦略も全然変わってくるし、本当に見つかって良かった。戦が始まるまで、戦えるようになるかは分からないけど……」


 リーツは満面の笑みで喜んでいた。

 ロセルも喜んでいるようだが、最近ある戦で活躍してくれるはずと、楽観視はできていないようだ。


「やったー」


 シャーロットも、手をあげて喜んでいる。


「それで、どんな人なの?」

「シャーロットと同じく女性だ。小柄で年齢は十六歳。性格はそんなに話をしてないから分からない」

「女か! よし、わたしが全力でしごいてあげよう」

「いや……あんまり厳しくするなよ……せっかく見つけた人材なんだから」


 変に厳しくして逃げられたら、最悪だからな。まあ、シャーロットの性格的に、逃げるまで厳しくすることはないだろうが。


「もう一人のザットという人も、アルス様の鑑定では、凄く優秀だということで、この二人は取るということで僕はいいと思いますよ。あまり人材を獲得していなかったので、そろそろ取る必要がある頃だと思っておりましたし」


 リーツは大賛成のようだ。特に反対も出なかったので、この二人は採用することに決定した。


 二人の住んでいる家に、採用の手紙を届けさせた。



 そして、数日後、ザットとムーシャが登城してきた。


「この度は、士官させていただくということ大変嬉しく思います」


 最初にザットがお辞儀をした。

 中々礼儀正しい男のようだ。ただ、野心はそれなりに高いようなので、完全に心を許すと危ない可能性はある。


「あ、あのー……本当にあたしは合格なんでしょうか?」


 ムーシャが自信なさげな表情でそう尋ねてきた。


「ああ、君には才能がある」

「ほ、本当ですか? 何だか信じられないんですが……郡長様は私に何の才能があると」

「君には魔法を使う才能がある」

「え、ええ? 魔法なんて使ったことないですよ?」

「練習すれば、必ず高レベルの魔法兵になれると約束する」

「へ、兵って、あ、あたしが戦うんですかー!? 仮に使えるとしても、もっと裏方みたいな感じかと……」


 だいぶ困っているようだ。よく考えれば、何の抵抗もなく戦に行っていた、シャーロットがかなり異常だっただけで、女性に戦に行けというのは、結構酷なことである。


 魔法の才能があるから、勝手にシャーロットみたいに変わった子かもと思ったが、性格的には普通の女の子のようだ。


「ていうか、女に魔法って使えるんですか?」

「使える。というか、私の家臣に魔法を使って、数々の戦功を挙げた女がいるが、知らなかったか?」

「は、初めて聞きました。そうなんですか」


 シャーロットは結構有名だと思っていたが、知らないものもいたか。

 地球のように、進んだ情報伝達技術があるわけではないので、知らないものがいてもおかしくはない。まあ、士官希望の女性で知らないというのは、相当珍しい気もするが。


「た、戦えるかはわかんないし、本当に魔法が使えるようになるかわかりませんけど、とにかく精一杯頑張ってみます」


 ムーシャはだいぶ焦りながら、お辞儀をした。


 とにかく、ローベント家に新しい家臣が二人加わることになった。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る