第159話 案内

 カナレに到着した後、私たちはカナレ城へと向かった。


 カナレ城はセンプラー城や、帝都の城と比べて古びており、あまり上等な城とは言えないが、それでも自分が城を持つ領主になったとなると、信じられない気持ちだった。前世では何の変哲もないリーマンだったからなおさらだ。


 城内に入った。この城の中に入ったのは久しぶりな気がする。最初は父が病気になったので、その代わりに行ったんだったな。


 ふと、私がカナレ郡長になったと父が知ったらどう思うのだろうかと思った。


 驚くだろうか、喜ぶだろうか、それとも両方だろうか。父の表情を想像すると、寂しさがすぅと胸に沸き上がってきた。天にいる父を喜ばせるためにも、ローベント家は絶対に存続させないといけない。


 メナスに城を案内してもらった。以前行ったときはあまり城中を回ったりはしなかったので、内装に詳しくはない。


 三階建ての城で、一階に食堂、大広間、応接室、宝物庫、武器庫、厨房、食糧庫、浴場、二階に書物室、談話室、軍議室、家臣たちの居住スペース、三階に城主とその家族の居住スペース、書斎、執務室、となっていた。


 ローベント家の屋敷に比べるとやはり広かったので、見て回るだけでも結構時間がかかった。もっとじっくり回りたかったが、ほかにも色々やることがあるので、少し見るだけに留めておいた。


 住居の準備は私と共に付いてきた使用人と、城に残っていた使用人にしてもらい、執務室で詳しい話をメナスから聞くことにした。


 執務室には、中央に大きな机が置いてあった。棚がいくつも壁際に並んでおり、中には領地に関する資料が収められているようだ。


「最初にこちらに目を通してください」


 そう言ってメナスが紙の束を渡してきた。

 かなりの枚数があった。何なのかと思って目を通してみると、どうやらカナレ郡全体の情報が書かれた紙のようだ。


 軍事の状況や、食料の収穫高、納められた税の額、人口、問題点、治安状況、地図、資源など様々な事が書かれている。


 ランベルクを治めていた時も、情報をまとめてはいたが、規模が少ないので、あまりまとめるべき情報が少なかったので、ここまでの枚数ではなかった。


 全部読み終わるだけで二時間ほどかかった。目に疲れが走る。前世では二時間も座って何かを読んでたら、目だけでなく腰やら肩やら痛くなっていたなと思い出した。今の体は若いからか、痛みはあまりない。


 見た限りでは、やはりランベルクと比べて規模は大きい。そもそもランベルクの情報も載っている。そういえば情報の書かれた紙を送ることになっていたな。


「案内は以上です。これから、どういう領地経営をしていくかは、話し合いになってお決めください。あ、それから、カナレ郡の各領主様たちはお早めに城にお招きになった方がいいです。一応こちらからは郡長が変更になったとはお伝えしておりますが」

「案内ありがとうございました」


 早めにベルツドに帰るよう指示が出ていたのか、思ったより案内は早く終わった。


 各領主への書状を早めに書いて送り、それから私のいない間ランベルクの運営をどうするか家臣たちと話し合うことにした。


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