第158話 カナレ城へ
後日、ルメイルがベルツド郡長になるという話を飲んだ。
そのあと、私をカナレ郡長にすると、クランが宣言した。
これで正式に私がカナレ郡長になることが決定した。
今回の決定に異論を挟む者はいなかったが、何人かの領主にはやっかみをかったかもしれない。険しい表情で私を見る者たちが何人かいた。一応反感を持ってそうな領主たちの名前と能力値を鑑定して、忘れないうちに紙に書き写した。今後、何かあった場合、この者たちに頼るのは危険そうだからな。
ベルツド城にはもう用はないため帰りの支度をしていたら、クランに呼び出された。
「アルス。予定ではバサマークとの戦に勝利した後、お主を郡長にするという事だったが、今回ベルツドを取る戦の働きは見事としかいえなかったからな。少し早く約束通り郡長にしてやったぞ」
上機嫌そうにクランは言った。まだ家臣たちの働きを自分の働きのように褒められるのにはなれない。何とも言えないむず痒い気持ちになる。一応調略に成功したり、何もしなかったわけではないのだけど、戦で大した働きが出来なかったからな。
私はむず痒い気分を押さえて、クランにお礼の言葉を言った。
「身に余る栄誉を頂き、感謝の気持ちでいっぱいです。郡長としてクラン様のため、より一層働く事を誓います」
「うむ、頑張ってくれ。以前も申した通り、アルカンテスを攻める前に、態勢を立て直すため、ある程度時間を置きたい。我が軍も兵糧が少なくなったりと、問題があるが、パラダイル軍はアルカンテスで戦をし、だいぶ損害が出たらしい。アルカンテスには、パラダイル軍と足並みを揃えて攻めたいと思っているため、パラダイル軍が態勢を立て直すのも待つ必要がある」
なるほど、思ったよりアルカンテス攻めまで時間がありそうだ。その間は、戦をせずに済むのは気が休まっていい。
カナレ郡長になるということで、色々新しく覚えることがありそうなので、それは大変だろうけど、戦に行くよりはずっと楽だろう。
「新しくカナレ郡長になるということで、大変な事もあるだろうが、きちんと戦に備えてくれ」
「かしこまりました」
私の返事を聞いたら、クランは満足げに頷いた。
それから、クランとは別れ、家臣たちと共にランベルクへと戻った。
ランベルクへと戻る前、ルメイルが家臣であるメナス・レナードをお供に付けてくれた。カナレ郡の現状の説明や、カナレ城の案内などをさせるためである。メナスはルメイルの家臣の中では有能な男で、カナレ郡長の仕事なども良く知っている。
ルメイルもカナレ郡長からベルツド郡長になるということで、有能な家臣は手元に置いておいた方がいいのではないかと尋ねてみたが、メナスがいた方がやりやすいのは間違いないが、長年郡長を務めてきたので何とかなる。初めて郡長になる者には、説明する者が必要だろうと言われた。だいぶルメイルには気をつかわせてしまっていたようだ。
一度ランベルクに入り、屋敷に残っていた家臣たちに事情を説明した。
驚いていた者、喜んでいた者、これからのランベルクがどうなるか心配をする者、色んな反応はあった。
カナレ郡長になるのなら、私の住居はカナレ城になる。
生まれてからずっと住んでいた屋敷なので寂しくはあるが、カナレとランベルクはそんなに離れていないため、どうしても行きたくなったら休みを取っていけばいいだろう。
私が屋敷をあとにした場合、ランベルクの運営を誰かに任せないといけない。一番信頼できる者と言えばリーツだが……彼には近くにいて私を支えてもらいたいし……あとで皆と話し合って決めるか。
ランベルクの屋敷から、カナレに移住するのは私と、家族たち、何人かの使用人たちだ。全員が移ってはランベルクの運営が出来なくなるので、少数が移ることになった。
必要な荷物をまとめて、ランベルクを出発しカナレ城へと向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます