第156話 終結
私たちはクランの命令の下、ベルツドを落とすため出陣した。
兵たちを率いるのはルメイルだ。彼は、今回の戦で立場を上げることになった。
敵は籠城を選択した。ベルツドを落とす方法は、包囲に決定している。ルメイルは、ベルツドにネズミ一匹通さないよう、徹底的な包囲網を敷いた。
包囲して数日で、ベルツドから使者がやってきた。降伏の使者だった。今度こそ万事休すと、敵軍は悟ったのだろう。
敵も無条件で降伏する気はないようだ。家臣たちの身の安全を保証することが条件のようだ。あくまで身の安全のみで、立場までは一緒にしてくれという条件ではなかった。郡長カンセスは、自身の身の安全は条件に入れていなかった。
ルメイルの独断で条件を飲むかは決められない。一度クランに書状を出して、どうするかを尋ねた。その条件で問題ないと返答が来た。その瞬間、正式にベルツドの降伏を受け入れることに決まった。
ルメイルはベルツドに使者を出した。
降伏するため兵たちの武装を解除し、武器や魔力水を引き渡すこと。城に罠が仕掛けてあった場合は、全て解除すること。などの条件を使者は伝えた。
敵は大人しくその条件に従った。
武装解除した兵たちの武器が大量に運ばれた。これ以上はないだろうと思えるほどである。
ベルツド城には侵入者撃退用の罠が、複数仕掛けられておりそれを全て解除させた。
隠している可能性もあるので、徹底的に調べさせた。
もう罠がないと確信を得ると、兵たちを引き連れてベルツド城へ入城した。
ベルツド城も城郭都市だ。町の規模は大きい。クランの治めているセンプラーほどではないが。カナレよりかは間違いなく大きかった。ベルツドは、センプラー、マサと並ぶ、ミーシアンの大都市の一つなので、それも当然の事だろう。
城に入り、ベルツド城にいた貴族たちの身柄を拘束した。彼らを殺すことはないだろうが、今までと同じ立場でいられるかは分からない。私の鑑定結果に大きく左右される可能性は高い。
一通りベルツドの重臣たちを鑑定してみた。意外と能力の低い者もいたが、概ね優秀な者が多い。ただし飛びぬけて凄い者はいなかった。
そして、郡長カンセスの姿もここで初めて見た。
髪は黒い。顔には皴が多めに刻まれている。ぱっと見は平凡な中年男性という感じだが、普通にはない目力があった。
ステータスは思ったより平凡だった。平均は六十中盤ほど。政治力は高く80くらいあった。通常の人間よりは、すぐれたステータスだが、ベルツドという大都市の郡長なので、もうちょっと高いステータスを持っていると勝手に予想していた。家臣たちにはだいぶ慕われていることから、人徳があるのだろう。
ベルツド城の安全を完全に確保したと、ルメイルはクランに報告をした。クランはベルツドに来るようだ。包囲に使った兵たちをクランの護衛に派遣した。その兵たちに守られ、クランがベルツドに到着した。
「カンセスよ。今回、降伏するという決断は賢明な物であった。しかしながら、私の誘いを断りバサマーク側に付き、私と戦う事を選んだ者を何の処罰もしないわけにはいかない」
クランは厳しい口調で言った。
カンセスの家臣たちは、不穏な空気を感じ取ったのか、カンセスを助命してほしいと、一斉にクランに頭を下げる。
「何も殺すとは言っていない。ベルツド郡長の地位からは当然降りてもらう。そして、バサマークとの戦いに決着が付き私がミーシアンを手中に収めるまで、牢の中にいてもらおう。その後は、態度次第で新たな領地を与えてもいいだろう」
殺さないのは比較的寛大な措置と言えるかもしれない。ここでカンセスを殺した場合、無用な恨みを買う事になってしまうため、ここはこれで正解だろう。
重臣たちの中には、カンセスと一緒に牢に閉じ込められることを望む者が多かった。クランに仕え忠誠を誓った者も少数だが何人かはいた。
こうしてベルツドの戦いは完全に終結し、戦後の処理を開始した。
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