第155話 トーマス

 トーマスは、一切喋らずに、ミレーユを睨み続ける。どうやらかなり嫌われているようだ。


 私はトーマスを鑑定してみた。


 トーマス・グランジオン 27歳 ♂

 ・ステータス

 統率 95/100

 武勇 85/91

 知略 94/94

 政治 80/80

 野心 20

 ・適性

 歩兵 A

 騎兵 S

 弓兵 A

 魔法兵 C

 築城 B

 兵器 D

 水軍 D

 空軍 A

 計略 S


 帝国歴百八十三年一月十日、サマフォース帝国ミーシアン州アルカンテス郡アルカンテスで誕生する。両親共に死亡。姉が一人。頑固な性格。甘い物が好き。乗馬が趣味。優しい女性が好み。主であるバサマークには、固く忠誠を誓っている。


 名将と言われるだけあって、物凄く優秀な能力値である。


 姉ミレーユにも引けを取らない。総合的には、トーマスの方が強いかもしれない。


 彼がクランに付いてくれたら、強力な味方になるだろうが、バサマークへの忠誠心はやはり厚そうである。


 簡単に寝返らせることは出来ないだろう。


 まあ、今回の戦でベルツドは、恐らくなすすべもなく落ちるだろう。流石にもう逆転の目はないはずだ。

 そうなると、アルカンテスにいるバサマークも、かなり厳しくなる。クランが、バサマークを打倒し、ミーシアンの支配者となれば、トーマスもクランに仕えるかもしれない。バサマークを処刑しなければの話ではあるが。


 私たちはその後、トーマスをスターツ城へと連れて帰った。



「久しぶりだなトーマス。三年ぶりくらいか。今回の作戦で、殺してしまうだろうと思っていたが、生きていたのは存外な幸運だ」


 クランは、トーマスが生きていたことを大いに喜んだ。


 恐らくこれからトーマスを自分の家臣になるよう誘うのだろう。


 トーマスもそれを予見していたようで、


「家臣になれといっても応じねーですよ。俺の主君はバサマーク様だけだ」


 誘われる前に牽制をした。


「そう言うとは思っていた。だが、頭の良いお主ならわかるはずだ。今この状況は、バサマークにとっては決して良くはないという事を。私に仕えれば、好待遇を約束しよう」

「こういうのは、損得で決めるもんじゃねーでしょ?」


 トーマスの態度は頑ななように見える。


 その後もクランは粘り強く勧誘したが、トーマスが首を縦に振ることはなかった。


 トーマスは、逃がしてはならない存在なのは間違いないので、一旦勧誘は諦めて、牢に入れることになった。


 そして、予定通りベルツドを包囲して落とすため、出陣の準備を開始。


 冬が開けたくらいで、出陣することになった。



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