第152話 策
出陣するのか。
敵の作戦は判明したから、このまま黙って見ている必要は確かに感じない。
しかし、どこか違和感を感じていた。
クランがその情報を知りえたという事は、敵がしくじってこちらに情報を漏らしたという事になる。
トーマスは名将という話だが、そんなしくじりを犯すだろうか? 詰めが甘いというか。
どんなに凄い人間でも、ミスはする時はする。考えすぎの可能性も高かったが、私はミレーユに相談をしてみた。
「アタシもそこに違和感は持ってるけど、とはいえトーマスは別に完璧超人じゃない。案外つまらないミスをする奴と言えばする奴だ……もっとも、奴と最後に会ってからもう長い期間が経っているし、その間成長した可能性はあるがね。ただ、それを加味してもミスをする可能性はゼロじゃないと思うよ」
ミレーユは冷静な表情でそう言った。
最近はあっていないとはいえ、身内である彼女がそう言うのなら不安はないだろうか。
「敵の指揮官は、師匠の弟……」
横で話を聞いていたロセルが、考え込むように何かを呟いた。
ロセルもどこか引っかかるところがあるのだろうか?
しばらく考え込んで、ロセルは何かを思いついたようにカッと目を見開いた。そして少し声を震わせて言った。
「て、敵の本当の作戦が分かったかもしれない」
〇
――――さて、上手く行ってくれるか?
トーマスは緊張しながらそう思った。
彼は今、兵士たちと一緒に、森の中に潜んでいた。
奇襲の上手いトーマスは、兵を隠すのに長けていた。大勢の兵が潜んでいるのだが、敵が近づいてきても、簡単には勘づかれない自信があった。
トーマスは必ず敵軍が、この森の近くにある街道を通ると確信を持って、森に伏兵を置いていた。
なぜ確信があるかと言うと、トーマスが来るように仕向けたからだ。
敵に使者を送り、さらに兵器みたいな物を設置して、敵に色々考えさせたあと、ワザと敵に情報を流すことで、敵はこちらの考えを見破ったと思わせる。これ以上の策はないと考えた敵は、必ず罠を作るのを阻止しにくる。
敵が来たところを奇襲を成功させる。
それでどのくらいの敵兵を打ち取れるかは不明だが、上手く行けば、どうしようもない状況を打開するくらいの数は討ち取れると読んでいた。
念入りに考えた作戦だが懸念もあった。
敵が慎重な姿勢を取って、来ない可能性がまずある。仮に来たとしても、奇襲の難易度は決して低くない。奇襲が得意なトーマスとはいえ、失敗に終わる可能性も十分あった。
トーマスは、成功するかは分からなかったが、策が見破られるとは思っていなかった。
自分の姉が、似たような作戦を模擬戦でやったなど、頭の隅にも思い浮かぶことがなかった。
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