第147話 シャドーの団員
数日後。
「団長がアルス様に話したいことがあるそうです。よければ一緒に来ていただけませんか?」
昼に、ベンがそう言ってきた。
「話したいこと? 一緒に行くのは別に構わないが」
特にやらなければならないことというのも、今はない。一緒に行くこと自体に特に問題はないが、何の用なのだろうか?
「そうですか。それでは付いてきてください」
ベンは、ファムの用件を言わずに、案内を始めた。
彼も知らないのか、もしくは伝え忘れているのか。
どうせ、ファムのいる場所に行けば分かるかと思い、聞かずに付いていった。
しばらく付いていくと、人目があまりない、路地裏まで案内される。
そこにファムがいた。珍しくいたのはファムだけでなかった。
五人ほど、見知らぬ顔の男女がいた。
「来たか」
ファムは私に気づきそう言った。
「あら、思ったより可愛いぼーやね」
ファムと一緒にいた女が微笑みを浮かべる。派手な装いの女性だ。化粧も濃ゆい。女性にしては背丈が高く、170はありそうだ。年齢はぱっと見では分からないが、30代前後か。
彼女以外にも、男が二人、女が二人いるのだが、どれも目立たない格好と顔をしており、いまいち印象に残らない。ベンみたいなタイプだ。まあ、ベンほど地味だというわけでもないのだが。
「この人たちは?」
「オレの部下たちだ。オレがお前の家臣になるということで、こいつらも一緒に家臣にして欲しい。仲間がいないと、オレも仕事がしにくくなるからな」
「この人たちがシャドーの団員か……なるほど」
派手な格好の女性以外は、確かに密偵として向いていそうだ。逆になぜこの人は派手なのだろうか。
疑問に思っている私を見て、ファムが説明をした。
「こいつはランバース、変装の達人だ。すでに鑑定しているのならわかっているだろうが、実際は男だ。こいつの素顔はオレも知らんくらいだ。本当はオレと会う時はもっと地味な男の格好をしているが、今回はお前に会うということで、なぜか派手な女装をしてきやがった」
「あら、主になるかもしれない人には、印象に残って貰わないと駄目でしょ?」
男? 全くそうは見えないので驚いた。ファムの時も似たような驚きはあったが、彼の場合は変装ではなく生まれ持って幼い容姿を持っていただけであったが、ランバースは変装して完全に容姿を偽っているようだ。
見た目はまだ分からないでもないが、声も女性だ。これはどうやっているのだろうか。魔法を使っているのだろうか?
私は一応鑑定して確認してみたが、本当に男だった。
能力は平凡だが、この特技は驚異的である。
ちなみに本名はランバースではなく、アンドリュー・スマージュというようだ。生まれはサマフォース帝国外ということで、これも驚いた。言葉は達者だし、どういう人生を歩んだら、外国生まれの人間が、ミーシアンで傭兵をやることになるのだろうか。
興味があったが、そう簡単に話してくれるような事でもないだろうから、もっと仲良くなった時に尋ねてみよう。
ほかの者たちも鑑定した。
全員本名と呼び名が違っているようだ。
背の高めの男が、ムラドー、中肉中背の髪が灰色の男がドンド、長い髪が特徴的な女はレメン、鋭い目つきの女はシャクと呼ばれていた。
全員、それなりに武勇と知略が高い。頭が良くて、更に動ける者でないと、密偵は務まらないのだろう。
その上で、レメンとドンドは魔法適性Bと高かった。
全員ミーシアン以外の出身で、色々あって傭兵になったんだろうと推測出来た。
「それでどうだ? こいつらも家臣にしてくれるか?」
「ファムがその方がやりやすいなら、家臣にするのは全然問題ない。というか能力が高いから、こちらから家臣になってくれと言いたいくらいだ」
「そうか。助かる」
そのあと、特に交流することもなく解散となった。あくまで顔を合わせただけである。
それなりに優秀そうな人たちが家臣になり、私は良い気分でスターツ城へと戻った。
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