第144話 決着
スターツ城にある練兵場で、戦いは行われることになった。
練兵場に立ち二人は睨み合う。
二人は練習用の木槍を持っている。最初は木剣でやるよう提案したが、ブラッハムは槍の扱いの方が得意なようだ。
リーツは剣も槍も同じくらい強いため、どちらでもいいと言ったから、槍で戦うことに決定した。
「会いたかったぜ、リーツ・ミューセス。今回は卑怯な手は食らわねーぞ……」
「卑怯って……だからあれはあなたの自爆でしょう……」
リーツは呆れた表情でため息をつく。
武器を落としたり、実戦だと致命傷となるであろう攻撃を食らった場合は負けである。
立会人はクランが用意した武人が担当する。私では勝敗を決めるのが難しそうなので、きちんと戦える者が務めた方がいいと思い別の者に任せた。
厳つい顔に髭を生やしている男で、なかなか真面目そうだ。武勇も75とそれなりに高い。
「一本勝負だ。リーツ・ミューセスが勝った場合、ブラッハム・ジョーは、アルス・ローベントの家臣となる。ブラッハム・ジョーが勝った場合、自由の身となる」
戦いが始まる前に、立会人が条件を言った。
「構え!」
立会人の男の合図で、両者は槍を構える。
「始め!」
その合図を聞いた瞬間、ブラッハムが動き出した。
とてつもない速度だ。
まずい! と思ったら、リーツは颯爽とその攻撃をかわしていた。
読んでいたのか反応したのか、分からないが、最初の一撃にブラッハムは全てを賭けていたようで、避けられて驚愕に目を見開いている。
リーツは、突きを放ち、ブラッハムの首に当たる直前で止めた。
「勝者リーツ・ミューセス!」
立会人がそう宣告した。
思ったより早く終わったな。
始まった直後に虚を突く作戦だったのだろう。ブラッハムの知略からすると、悪くない作戦ではあると思う。
「クソ……お前、なぜ今のを避けれたんだ……」
「悪くない考えでしたが、向かい合ったとき目が血走ってましたので、来ると分かってましたよ。来るのが分っていなければ、あの突きはかわせなかったかもしれませんね」
ブラッハムの突きを、リーツは読んでいたようだ。
確かに難なくかわしていたように見えたので、流石のリーツでも事前に分かっていなければ無理だろう。
「ぐ……クソ……表情に出ていたのか……」
悔しそうに拳を握りしめるブラッハム。
「俺の負けだ……約束通りあのチビ助に仕える」
「チビ助ではありません。アルス・ローベント様です」
「あー……分かった。アルスに仕える」
「アルス様です」
リーツは口は笑いながらも、目元は笑っていなかった。中々威圧感を感じる表情である。
私がブラッハムの教育係をするよう命じたので、恐らくもう教育を始めているのだろう。
ブラッハムは予想通り、自分を打ち負かした相手には素直に従うようで、「アルス様……」と言った。
あの感じなら、リーツはブラッハムの教育も上手くやってくれそうである。
リーツが戦いに勝利したことにより、ブラッハム・ジョーを家臣にすることに成功した。
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