第140話 勝利後

 敵兵が逃げていった後、城を調べた。

 罠が仕掛けられている可能性があるので、ファムとベンや、罠解除の上手い者たちが先に城に入って調べたが、特に罠は仕掛けられていなかったようだ。

 リーツとミレーユは、防御魔法を作動させている施設だけでなく、罠魔法を作動させる施設も無力化したようなので、そのおかげかもしれない。


 ベルツド郡長とトーマスはどこにもいなかった。逃げたようだ。スターツ城の城主、ステファンは城に残っていた。


 逃げていった敵兵への追撃も行ったが、敵の退却戦は非常に上手く、逃げていった兵はあまり討ち取れなかった。


 市街に残党がそれなりに残っていたが、ほとんどの兵は投降した。


 これにてスターツ城を完全に制圧し、手中に収めることに成功した。



「此度の戦は大勝利である! 味方にも被害は出たがそれ以上にスターツ城を手に入れ、勝利に大きく近づいた! 皆ご苦労であった!!」


 クランが勝利後、全員を集めて労いの言葉をかけた。

 今回の戦は、今までとは違い結構被害が出たようだ。

 正門を攻めていたクラン本隊が、魔法の攻撃を割と食らったのが、原因のようだ。


 尤も死んだのは数千人で、全軍の数を考えると、問題ない程度の被害ではある。


 クランは言葉を続ける。


「しかし、まだ気を抜いてはならん! この城を落とすときだいぶ破壊をしたため、今防御力が著しく落ちている状態だ! いつもならば祝勝会をするところであるが、まずは防壁の応急処置を終わらせてからにする! それまで気を抜かず、守りを固めておくように!」


 勝った後は、決まって祝勝会をするが今回はしないのか。

 まあ、妥当な判断だな。

 城壁が壊れた状態で気を緩めたら、奇襲をされるかもしれない。追撃に失敗して大勢の敵を逃がしてしまったから、虎視眈々と敵は奇襲のチャンスをうかがっているはずだ。このスターツ城は、是が非でも取り返したいはずだからな。


 奇襲に警戒をしておけば、そうそうやられる心配はないだろう。向こうもイチかバチかの作戦はやってこないと思う。


 クランの言葉通り、まずは守りを固めつつ、城壁の修復作業が行われた。今回は壊れた箇所が多いため、そう簡単には直し切れないようだ。


 ベルツドを落としに行くには、応急処置を終わらせてからではないといけないが、ちょうど冬が本番になる時期で、雪が降って積もる可能性が高い。どの道、冬が過ぎるのを待ってから行かないといけないので、ちょうど良かったといえるだろう。


 それから、私はクランに呼ばれた。


「此度の戦もまたお主に助けられた。奇襲がなければこの城は落とせなかった。それと、お主が雇ったシャドーが絶対絶命のピンチから救ってくれた。心より礼を言おう」

「もったいないお言葉です」


 クランから礼を言われ、私は頭を下げながら返答した。


「あとで、お主を含め高い功績を上げた者には、褒美を取らせるが、今回の用はそれではない。いつも通り人材の鑑定をしてもらいたい」

「お安い御用です」

「今回は少しばかり捕らえたものの数が多いから、少し負担をかけてしまうと思うが、頼んだぞ」


 捕らえた数が多いのか。

 あれだけ激しい戦いになれば、そうなるか。

 鑑定スキルは使うと疲れるからな。

 最近はそこまで乱用することはなかったが、久しぶりに疲れるまで使うことになりそうだ。


 私は捕虜が捕らえられている場所まで案内された。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る