第139話 決着

 城壁を崩した後、私たちは塔の上から戦況を見る。


 一瞬で戦況が味方の優勢に傾くという事はなく、敵兵も士気が高く必死で兵の侵入を食い止めようとするが、それでも徐々に本隊は数の多さを生かして、押し切り市街に大勢の兵を侵入させることに成功した。


 このままではまずいと敵兵は判断し、後退を始めた。


 市街の防衛は捨てて、城の方の守りを厚くする作戦だろう。


「ねーねー、あの敵兵が後退してるけど、攻撃しなくていい?」


 シャーロットがそう言うが、敵兵がいる場所は町中である。


 爆発魔法なんかを使ってしまっては、町を破壊してしまうだろう。


 この城を陥落させた後は、統治しなくてはならないが、市街を爆破してしまっては住民に嫌われて、上手く統治できなくなるだろう。


 下手をしたら反乱を起こされて、まずいことになる危険性がある。


 敵兵を減らせるのはいいが、爆発魔法で攻撃をしなくても、こちらがかなり優勢であるので、やるべきではないだろう。


「やめておけ。町を破壊すべきじゃない」

「町破壊しなきゃいいの? ちゃんと調節するよー」

「出来るのか?」

「分かんない。出来るかもしれない」

「かもしれないで使うな」


 危なっかしいことをいうやつだ。


「さて、我々はどう動くべきか。爆発魔法で敵軍を攻撃するのは駄目だが、このまま何もせずとどまっておくべきではないだろう」


 ルメイルはそう言ったが、ロセルがそれに反対の意見を言う。


「いえ、今不用意にこの塔を出てはいけません。敵に塔を奪取されたら、厄介ですから。敵は追いつめられているので、市街を爆破するという作戦も、平気で行ってくる可能性があります。我々はこのまま、塔の守りを固めておくべきです」


 ロセルの意見にルメイルは納得したようだ。

 しかし、ロセルもこの戦でだいぶ成長した。


 常に怯えて、意見を言うのもたどたどしかったが、最近は少し自分に自信を持ち始めたのか、はっきり意見を言うようになっている。


 しばらくロセルの言葉通り、塔の周辺の守りを固めながら待機をする。


 敵兵たちは塔を奪い返そうと攻めてきた。


 戦闘になったが、クラン本隊から追撃を受けている状態だったので、あまり全力では戦って来なくて簡単に落とせないと知ったら、諦めて城の方へと退却していった。


 ロセルの進言通り、塔を守っていて良かったようだ。

 空けてたら間違いなく取られていただろうからな。


 クラン本隊が塔の位置まで到達した。


 こうなると守らなくても、敵が塔を奪うことは出来ないだろう。


 私たちは塔から降りて、本隊に合流した。


 クランは前線で指揮は執っていなかったため、会う事はなかった。


 このまま一緒に城まで進軍する。


 クランのおかげなのか、兵隊たちはかなり規律が取れていて、民間人の家を荒らしまわっている輩はいなかった。


 しばらくして、「撤退!!」と敵軍から叫び声が聞こえてきた。


 撤退?


 どこから撤退する気なのかと疑問に思う。

 スターツ城は守れないと判断して、放棄し、北門から外へと出て、ベルツドまで行く気なのだろうか?


 まあ、たしかにこうなると守るのは不可能なので、現実的な判断かもしれない。


 城付近まで進軍すると、守備している兵は誰もいなかった。


 予想通り守れないと判断して、逃げたようだな。


 最初は少し不安ではあったが、無事スターツ城を落とすことに成功した。

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