第138話 スターツ城攻略戦⑦
塔の援軍兵との戦闘に勝利した。
不意を付けた形になったので、案外あっさり決着がついてよかった。
正直戦場にいるので、かなり恐怖心を感じている。このまま何事もなく終わればいいのだが。
「援軍助かった」
クラマントがお礼を言ってきた。どうやら結構危ない状況だったようである。
「さらなる援軍が来る前に、この塔を占拠しなくてはならないが、魔法の罠が仕掛けられており、簡単に上に登れないようになっている。罠を解くのが得意な奴も、傭兵団にいるのだが、そいつは向こうの塔の攻略メンバーに入っているから、今ここにはいない」
罠を解くのが得意な者は、シャドーのファムとベンだ。
ファムとベンは付いてきているのだが、ファムはクランを助けるとき、だいぶ目立った行動を取ってしまったため、これ以上はまずいと思ったのか目立たないよう戦っている。軍勢の少し遠くから、弓や魔法で援護しているという感じだ。
ベンは普通に兵の中に紛れて戦っていた。地味なので活躍しようと、他人に覚えられないようだ。思ったより恐ろしい特性である。
目立たないようにしているファムに頼むのも何なので、ベンに頼んでおこう。
「罠を解くのが得意な者に心当たりがあるから、その者に任せよう」
私はベンを呼んで、塔にある罠を解除するよう命じた。
黙ってうなずいた後、ベンは塔に入っていく。
数分待っていると、戻ってきた。
「任務完了しました」
思ったより早く終わったようだ。
「終わったようだ」
「早いな。よし、では塔に突入する。アンタらは外の守りを固めておいてくれ。あと、もう一方の塔にも、念のため援軍を送っておいた方がいい」
クラマントはそれだけ告げて、塔の制圧を行った。
私たちは兵を二手に分けて、別の塔へと兵を送る。
そして、守りを固めて、敵の援軍が来ても対応できるようにした。
しばらく経過して、塔の制圧が終了したようだ。
罠さえ解除すれば、塔の中には少数の魔法兵しかいなかったため、制圧は楽勝だったようだ。
ちょうど制圧が終了したとき、リーツとミレーユから、防御魔法を使っていた魔法兵を除去することに成功したと報告があった。
正門付近の城壁は、すでに防御魔法がかかっていない状態になったようだ。
「これで魔法で城壁を破壊するが……魔法を使うのはシャーロットに任せた方がいいだろうな」
そうルメイルが提案した。
「そうですね。メイトロー傭兵団でもシャーロット以上の魔法兵はいないですし」
少し前、鑑定スキルでメイトロー傭兵団で一番の魔法兵を見たことがあるが、シャーロットには遠く及ばないステータスだった。
クラマントに魔法はシャーロットが使うから、それまでは使うなとルメイルが指示をした。
城壁が壊れる様子を確認するため、私とルメイル、ロセルも一応一緒に塔に登る。
高い塔なので結構登り切るまできつかったが、何とか登り切る。
塔の頂上には、少し風変わりな触媒機が置いてあった。
普通は球体なのだが、筒状になっている。
「何か変わってるねこれ。さっきまで使ってた魔法兵はどうしたの?」
「殺した」
「勿体ないなー。魔法兵は貴重だから、今度から殺さないで済みそうなら殺さない方がいいよー」
クラマントに、シャーロットは苦言を呈す。珍しく正論を言ったので、クラマントも反論は出来なかったようだ。
シャーロットは魔法を使う準備をしている。しかし、自信なさそうな表情で、
「うーん……これでいいのかな? とんでもないところに飛んで行っちゃうかもしれないなぁ」
かなり不穏な事を言い出した。
「ま、待て、自信がないなら使うべきでは……」
「まあいいや、やっちゃえ」
投げやりな感じで呪文を唱え始める。止めようとしたが、呪文を唱えだすと、シャーロットは集中して人の話を全く聞かない。
下手したら暴発してこの塔が吹き飛ぶのではと、物凄く不安になり、思わず私は身をかがめる。
しばらくして、遠くから爆音が聞こえた。
「おー、成功したー」
シャーロットのその言葉を聞き、身を起こして城壁を確認する。
確かに壁に命中していた。
しかも、一撃で壁を崩して穴を開けたようだ。
防御魔法がかかっていないとはいえ、魔法が効きにくい城壁であるのだが、シャーロットの魔法はすさまじい威力であったため、一撃で破壊した。
「よーし、やっちゃえ」
それから何発も魔法を撃ちこみ、城壁に複数穴を開けた。
「ま、待て壊しすぎだ。もういいだろ」
あまり壊しすぎても、修復が困難になるので、ある程度開けさせて止めた。これだけやればもう十分だろう。
最初の予定とは少し違う方法だったが、結果的にスターツ城の城壁を無力化することに成功した。
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