第137話 スターツ城攻略戦⑥

 私たちは全員城に侵入し終えた。城の中には敵兵の遺体がそこら中に転がっている。もう見慣れてきたとはいえ、遺体を見て気持ちが良くなるわけはない。


 もしかしたら自分もこうなるかもしれないという、怯えも感じてきたが、ここで震えているわけにはいかない。


 城に入ると先に入ったリーツ、ミレーユ、クラマントの隊から報告が届いた。


 どうやら上手くいっているようである。


 メイトロー傭兵団だけは、簡単に正門は開けられないから、塔を占拠する方針を取っているようだ。

 ただ正門を開けるよりも、そっちの方が効果的かもしれない。


 このまま行けば、この城の魔法防御網を破壊し、さらに塔を占拠してかなり有利になれるだろうが、敵も流石に黙ったままではいない。


「敵は城主のいる城を警護していた兵を動かして、対応させているようです」


 敵の様子を探らせたら、そう報告があった。


 正門で戦っている兵たちは、クラン本隊の攻めがかなり激しいため、動かせないようだ。

 まだ戦場になっていない、城の警護兵は動かせると判断したのだろう。流石に全軍は動かしていないようだ。


 今になってようやく動かしたようなので、正直対応は遅い。やはり、トーマスがいない影響で、咄嗟の対応が遅れているのだろうか?


「援軍兵は、塔を狙っているメイトロー傭兵団をまず止めようとしているようです」


 当然だな。敵からしたら、あの塔が取られたら、物凄く不利になる。


 情報をすべて聞いたロセルが、ルメイルに意見を言う。


「ここはメイトロー傭兵団を援護しに行きましょう。メイトロー傭兵団の方に行った敵兵を食い止めるのです」

「そうすべきだな。塔を占拠できれば、間違いなく有利になる。よし、急いで向かうぞ!」


 ルメイルは、ロセルの意見を即座に採用。


 私たちは、敵の兵を食い止めに行くため、急いで市街を進軍した。



 塔は高いので、どの辺に行けばいいのかは分かるのだが、スターツ城に来たのは初めてなので、どういうルートで行けば早くたどり着くかは当然ながら分からない。


 そのため、結構時間がかかる。


 逆に敵は塔までの道のりを知っているため、私たちより早く到着していた。


 間に合わなかったかと思ったが、メイトロー傭兵団が塔の前で敵兵と戦闘していた。ギリギリ間に合った。


「魔法兵!」

「はいはーい」


 シャーロットも一緒に来ていた。

 大型の触媒機は城には運び込めないため、今持っているのは小型であるが、それで充分である。


 シャーロットを含めた、数十人の魔法兵が同時に敵に魔法を放つ。


 敵からすると不意打ちになったため、完全に対応することが出来ず、統率が乱れ始める。


「突撃!」


 その状態で、ルメイルが歩兵に突撃するよう号令を出す。


 統率の乱れた兵たちなので、楽に勝てると思ったが、元々一番重要な場所の警護を任されている兵たちだけあって、精鋭が揃っていた。


 押し返されそうになる。


 やばいと思ったが、相手はメイトロー傭兵団にも対応しなければならず、挟み撃ちのような状態になっている。私たちの方に気を取られ過ぎれば、精鋭ぞろいのメイトロー傭兵団の攻撃に対応しきれなくなる。


 非常に難しい状況になっていたため、いくら精鋭ぞろいでも凌ぎきるのは難しく、兵が減り続ける。

 それでも敵は逃げなかったので、中々の根性であるが、最終的に全敵兵を討ち取ることに成功した。



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