第135話 スターツ城攻略戦④
一騎打ちが始まった。
ブラッハムは素直に真っすぐ距離を詰め、特にフェイントも入れず槍で突きを入れる。
思ったより早いスピードだったが、単純すぎる動きだったので、リーツは難なく回避する。
ただ、一度回避した後、すぐに二度目、三度目の突きが来る。
相当な速度で何度も突いてくるので、避けるだけで精いっぱいで、反撃することが出来ない。
頬や腕などを槍がかすめて、血が流れる。
ブラッハムは急所を狙ってきている。
なるべく殺さないようにと言っていたが、そんなこと忘れているのか殺す気満々にしか見えない。殺さずに相手を制圧するには、普通は武器をはたき落とすなどの方法を取るはずである。
リーツはこのままではまずいので、とにかく相手の間合いから出る必要があると思い、大きく二歩後退した。
距離を詰めてなお突こうとしてくるブラッハム。
リーツはハルバードを全力で振り、相手の持つ槍をはたき落とそうと試みる。
これは受けてはならないと、ブラッハムは本能的に感じたのか、槍で受けず一歩後退した。
それを見たリーツは反撃のチャンスであると見て、すかさず、ハルバードを振る。
手数を多くするため、少し威力は下がっており、ブラッハムも今度は槍で受け止めて対処する。
しかし、弱くなっていると言っても、それでも一撃一撃が重いため、受けるたびに腕に強い痺れが走り、反撃に転じることが出来ない。
リーツはこのまま押し切ろうと思うが、ブラッハムは高い身体能力を発揮して攻撃をかわし、逆にリーツの脳天めがけて突きを放った。
何とか上体を逸らして突きを回避。そのあと、咄嗟に後退して距離を取った。
「やっぱり思った通り強いじゃねーか。楽しくなってきた」
純粋な子供のような笑みをブラッハムは浮かべる。
斬り合うのが楽しいという感情を持ったことは、リーツはなかったので危険な奴だと思う。
「さて、大技行くぜ!」
興奮したように叫んだブラッハムは、大きく後ろに後退し走り出す。
途中でジャンプした。生身の人間とは思えないほど、高く飛んでいる。
そのまま、下にいるリーツに槍を向けて、全力で突きに行く。
「ドラゴンスピア!!」
技名を叫ぶ。
ド派手な技で、当たると確かに盾や鎧でもあっさり貫けるくらいの威力はありそうだが、所詮は真っすぐについてくるだけなので、避けるのは容易い。
リーツはさっと横に避ける。
ブラッハムの槍はレンガ造りの道を深く貫通する。
「ぬ、抜けねー!! おい! 避けるなんて卑怯だぞ!」
「い、いや……普通避けるでしょ」
あまりの馬鹿な行動にリーツは呆れる。
「とにかく僕の勝ちだね」
リーツはブラッハムの首元に、ハルバードを突き付ける。
「て、てめぇ……そ、そんな方法で勝って嬉しいのか? ひ、卑怯な手を使って勝っても嬉しいっつうのか?」
まるで卑劣な罠に嵌めたと言わんばかりの表情で、ブラッハムはリーツを睨み付ける。
「君が自爆しただけだから……」
リーツはさらに呆れた。
「約束だから情報を話してもらうよ。まさか、破るとは言わないな? それこそ卑怯だよ」
「ぐ……」
ブラッハムは唇を噛みしめた悔しそうな表情をする。
観念して、知っている重要な魔法施設がある場所をリーツに全て話した。
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