第133話 スターツ城攻略戦②
リーツとミレーユは、隊を率いて城壁内部に侵入し、魔法兵の除去を試みようとしていた。
防衛戦における魔法兵の働きは大きい。
防壁を守るための防御魔法を使う役目であったり、城にある大規模な罠を発動する役目、大規模な攻撃魔法を発動する役目、とにかく色々仕事がある。
最初に一刻も早く除去しておく必要があった。
「重要な役目を負っている魔法兵は、そう簡単には見つからない場所にいるからね。見つけるのは面倒だ。敵に聞くのが一番手っ取り早いだろうね」
「……拷問する気か?」
「嫌かい?」
「いや、そうではないけど、話す奴がいるのかな」
「さあね。まあでも、誰だって痛みは怖いものだし、その恐怖に耐えきれない奴は必ずいる。ただそいつが情報を知っているかは、何とも言えないね」
「知ってそうな奴を捕まえて聞くしかない……か。なるべく早く済ませないといけないけど、間に合うだろうか」
「間に合わせないとねぇ」
ほかに有効そうな方法もないため、リーツとミレーユは行動を開始する。
「二手に分かれようか。アタシは右側、アンタは左側で探してくれ」
「分かった」
リーツとミレーユは二手に分かれて、情報を知っている者を探し始めた。
スターツ城は、城郭都市である。城が中央にそびえ立ち、その周囲に市民の住んでいる家々がある。
今回は襲撃に備えて、住民たちは全員家に閉じこもっているようだ。通りを歩いている者はどこにもいない。
リーツは町中を進みながら、どうやって情報を持っている者を探そうか考えていた。
(闇雲に探しても見つかるものじゃないよな。軍の偉い者が知っているだろうけど……町中に待機している隊を奇襲して、その隊長に話を聞こうか)
敵兵は、半分以上が、スターツ城の外で門を守っている。もし破られた場合、正門真後ろに兵を配置して対応できるようにもしている。それから、城本体の防衛にも、兵を割かないといけないだろう。
ただ、それ以外にも、まさに今のような奇襲に備えて、町中に兵をある程度配置しているはずだ。
ただ、奇襲はあまり想定していないだろうから、それほど質の高い兵は置かれていないとリーツは予想していた。
その証拠に、クラマントにあっさりと突破を許していた。
リーツは兵を率いて、敵を探しながら町中を歩いた。
充分に周囲を警戒しながら、先に敵に見つからないように歩く。地の利は敵にあるため、油断して歩くことは出来ない。
歩いていると敵を先に発見した。
敵が侵入したという事で、慌てふためいている様子が見て取れる。どう見てもあまり経験豊富な兵たちではない。
丁度敵の背後にいた。
今がチャンスと思い、リーツは兵たちに突撃するように指示を出す。
相手は攻撃を食らってからようやくリーツ達の攻撃に気付く。
「て、敵襲!!」
率いていた隊長も大した能力はなく、あっさりと隊は壊滅状態にさせられた。
リーツは隊長を捕縛する。
(さて、こういうのは得意じゃないんだけど、やらないといけないか)
「お、俺は何もしゃべらんぞ! 主君を裏切るような真似は恥である!」
そう言ったが震えているのは明らかだった。
「この城には重要な魔法兵が動かしている施設がいくつかあるはず。それを教えてくれ」
「教えん…………っていうか知らん! 忘れたそんなもの!」
「教えないと……痛い目に遭うよ」
「ま、待て本当に知らんのだ! 俺は頭が良くなくてな! 物覚えも悪いし!」
リーツは正直嘘は吐いていないと思った。
確証はないが知らない者に時間をかけ過ぎるのもまずい。
ここは自分の勘を信じ、聞き出すのをやめて、ほかを当たることにした。
捕縛した隊長は、縛った状態で放置して、別の場所を探す。
すると、今度は逆に側面から奇襲を受けた。
リーツは素早く指示を送り、兵を落ち着かせて対応。
自分に向かってくる敵兵を次々に斬り倒す。
ただ、中々敵が手ごわい。
後方にこのレベルの兵がいるのは、リーツとしても予想外であった。苦戦を強いられる。
すると、
「お前らそこまでだ!!」
と大声が響き渡る。
しばらくすると、筋骨隆々だが背丈は低い少年が出てきた。
槍を持っており、頬に傷がある。
年齢は十五歳前後とまだ若い。
「お前強そうだな。一騎打ちしようぜ。お前が勝ったら何でも言う事聞いてやるぜ」
いきなり少年はそう言ってきた。
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