第127話 敵の狙い

 クランからの書状が、ここロルト城へと届いた。


 ルメイルが書状を開き、中身を読み上げる。


 内容は奇襲作戦についての書状だった。


 最初に現在苦境に立たされており、奇襲作戦は大変助かる。ありがたいかぎりであると、褒め称えていた。


 我々の兵だけでは足りないかもしれないから、いくらか兵を貸すと、兵の受け渡し場所や時間を指定した上で書いてあった。


 それから、今日から三日後にスターツ城へ攻め込むので、それに合わせて奇襲をしてくれとも書いてある。


 何か問題がある場合は返事を寄越し、問題が無い場合は、すぐに行動を開始せよとの命令で書状は締めくくられていた。


「皆の者、どう思うか? すぐに行動を開始していいだろうか?」


 ルメイルが質問をする。


「この作戦に特に問題点はないかと思います。行軍しながら城の情報を確認し続けておく必要はあると思いますけどね」


 リーツがそう言った。


 ロセルやミレーユも、特に反対意見は言わなかった。


 ロルト城からスターツ城までは、三日かかる。

 クランが攻めるタイミングに合わせて行動をするのなら、今すぐにでも出陣した方がいいだろう。


 元々もすぐにでも行動を開始できるよう、準備は済ませてある。


「よし! スターツ城へと進軍する!」


 ルメイルがそう号令を出して、私たちはロルト城からスターツ城へと向かった。



 〇



 道中、なるべく敵に動きを気取られないよう、慎重に兵を動かしながら、着実にスターツ城へと向かっていた。


 シャドーにもスターツ城周辺の動きを探らせる。

 何か起こった場合、シャドーへの依頼を変更する際、ファムが近くにいたほうがいいので、諜報活動は部下に任させて同行して貰っていた。


 途中、クランの派遣した兵と落ち合い、数が増えた。

 これで奇襲の成功確率も上がるだろう。


 そのあと、シャドーから報告を受けた。

 報告をしに来たのはベンだ。


「スターツ城で妙な動きが確認されました。魔法部隊が外に出たようです。大きめの触媒機を持ち、なるべく気づかれないよう、移動しているそうです」

「どこに?」

「山の上だそうです。本隊が陣取っている様子を一望できる山だそうですね。奇襲を狙っているのでしょうか?」


 ここで奇襲をして、クラン軍にダメージを与えるつもりなのだろうか。


 ロセルがベンに質問をする。


「その山っていうのは、トーライ山ってところ?」

「はい、それです」

「ここらではトーライ山くらいしか、本隊を一望できる山ってここしかないけど……でも妙だね。一望できるって言っても、結構離れてるから、ここまで魔法を届かせることは出来ないし……歩兵を隠すとかなら分かるけど、大型触媒機じゃ進軍速度が遅くて、届く場所まで進軍している間に、バレるからね……どういうつもりなんだろ」


 敵の狙いはロセルには読めないようだ。


「なるほどね。トーマスの奴の考えそうな手だ」


 ミレーユがそう言った。


「わかるのか?」

「ああ、奴は恐らくクランの命を取る気だ」


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