第126話 スターツ城
スターツ城、執務室。
ベルツド郡長のカンセス、トーマス、それからスターツ城城主のステファン・ドルーチャが、戦についての話し合いを行っていた。
「戦況は悪くないな」
カンセスが現状を考えてそう言った。
「数の上では不利と言わざるを得ませんが、トーマス殿の作戦のおかげで、敵の魔力水を大幅に失わさせることに成功しました。力押しでくるかもしれませんが、それで落とされるほど、この城は脆弱ではありません」
ステファンが自信満々に言った。
強面で大柄の男である。
顔に傷が複数入っており、戦場で幾度となく戦ってきたということが窺い知れる。
「こうなると敵はしばらくは攻めてこれんでしょうが……クランという男を侮るのは良くないと俺は思いますね。このままやられっぱなしで終わるとも思えない。何か隠し玉を持っているかも」
「何だ隠し玉とは」
「これは確定した情報じゃねーですが、俺の姉っぽい奴を敵陣で見たって報告がいくつか上がってきてるんですよね」
「お前の姉というとミレーユか?」
「そうです。まあ、重用はされていないようなんで、そこまで危険視する必要もないかもしれねーですけどね。信頼を得てなければ、能力を生かすことも出来ませんから」
「ミレーユはかつては、凄まじい才能の女が出てきたと騒がれておったが……流石に弟の敵は出来まいか」
「ミレーユの奴が隠し玉でないにしても、油断をするのは駄目ですから、ここで敵の弱点を突き、一気に勝ちまで持っていきます」
そう語るトーマスを、カンサスは驚いた表情で見る。
「突いたら一気に勝てるような弱点が敵にあるのか?」
「あります。クラン本人です」
トーマスの返答を聞き、カンサスは怪訝な表情を浮かべる。
「クラン本人? なるべく敵を褒めたくはないが、優秀な男であるのは間違いないぞ。私も何度か一緒に戦った経験がある」
「優秀だから故に弱点なんですよ。今回の戦、本来ならクラン本人はセンプラーにいて、侵攻は家臣に任せるべきでしょう。クランが死ねば負けも同然ですからねー。奴が死ねばほぼすべての貴族はバサマーク様に下る。クランには嫡男がいますが、未熟な嫡男に付く貴族は少数派です。大きなデメリットがあるけど、クランは優秀であるがゆえに、今回の侵攻を他人に任せておけず、自ら指揮を執ってんですよ」
「戦場に出ているクランを討ち取るのか? 確かにそうできれば一番であるが……可能なのか?」
「自分が死ぬのは一番まずいと分かっているでしょうから、当然周囲の警護は万全ですよ。でも、そこはほら、俺が何とかしますよ。人を殺すのには色々方法がありますから、一番確率の高い方法を試します」
トーマスが自信満々に豪語した。
「頼もしい奴だ」
「ああ、クランを討ち取る計画は俺が進めてるんで、お二人はこの城の防御を固めておいてください。成功するとは限らないんでね。失敗したら結局この城で戦う事になるんで」
「了解した」
トーマスは、クランを殺害する計画を立て始めた。
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