第124話 軍議
家臣たちを集めて軍議が始まった。
まず私の口から、現在のスターツ城の戦の戦況を説明した。
「なるほど……それは厳しい状況ですね……」
リーツが感想を漏らした。
「師匠の弟が来てたって話だけど、スターツ城の防衛戦には参加してるのかな?」
「十中八九してるだろうな。敵の弱点を的確に突けとは、このアタシが教えたことだ。今回の戦では、その教えが守られているみたいだねー」
その教えのせいでクランが苦しんでいるというのに、他人事のようにミレーユは言った。
昔の話だろうから、別に悪びれろとは言わないがな。
「とにかく厳しい状況なので援軍に行きべきだと思うのだが……敵の不意を突く形で援軍に行けば、より効果的であると、ルメイル様と話していたのだ」
「そうだ。皆の意見を聞かせてもらいたい」
ルメイルがそう言った。
「この城にある爆発の魔力水はいくらだ? それによって話は変わってくるね。多ければ、普通に届けるのが無難だね」
「大体300Mほどだ」
これは軍議を開く前に、私が調べておいた。
「300とはまた微妙な。大型の触媒機で魔法を一発ぶっ放すのには、30Mくらい必要だからな。奇襲で防御魔法が薄い場所を狙うのなら、シャーロットが使うなら、二、三発で壁を壊せるだろうが、正面から防御魔法ありだと300では壊せないだろうな」
「ならばやはり奇襲しかないか」
「ほかにも、奇襲に見せかけて敵を陽動するという手もある。これをやる場合は、クラン……様と事前に連絡を取り合って、緻密な連携を行う必要があるけどね」
「陽動か……」
「まあ、アタシは奇襲が好みかな。奇襲の場合は、まず敵の弱い位置を見つけ、そこにシャーロットが爆発魔法を撃ちこんで、防壁を壊す。そして、防壁から一気に兵を流し込んで、敵の城の門を開けたり、防御魔法の機能を壊したり、散々荒らしまわる。そして、本隊に城を攻めさせて陥落させる。こんな感じの作戦になるだろう。敵の城に潜入するときは、かなり戦えそうで面白そうではある」
面白いか面白くないかで、作戦を決めてもらいたくはないが、まあ、奇襲が一番効果はある気がする。
「俺も奇襲で良いと思うけど……問題はどこに城の弱点があるかですね。城の構造が書かれた書物ってありませんか?」
ロセルがルメイルに尋ねる。
「書庫を探させたら、スターツ城の単純な構造が書かれた書物はあった。どこに罠があるとか、そういう軍事機密になることは書かれていなかったが」
ルメイルは机の上に、スターツ城の構造が書かれている地図を開いた。
「かなり大きな範囲を城壁で囲ってるね……これは包囲して兵糧攻めにするのは難しそうだね……」
城壁内部には町がある。戦で民間人を巻き込んでしまう可能性もありそうだ。
「弱そうなのはここだな」
ミレーユがある一点を指さす。
北西にある城壁だ。
「何で分かる?」
「防御魔法を使用するには、魔法兵の存在が必要不可欠だ。質の高い魔法兵が防御魔法を展開すれば、防御力が高くなるのだが、この広い城壁だと一人で全てを担当するのは不可能だろう。最低三十人くらいは必要かな? その上で、一番重要なのは、南側、正門付近の守りで、ここを突破されると大量の軍勢が雪崩れ込んでくるから、守りを固めなければいけない。その点、北西には門がなく、さらに斜面になっていて、攻め辛い。ここから攻めてくる確率は低いだろうから、比較的質の低い魔法兵が防御魔法を担当しているだろう」
「なるほど……でも、そうなるとここから攻めるのは難しいってことでもあるよな?」
「クラン様と連携すれば、成功する確率は高められると思うよ。攻めるフリをさせて、正門の警戒感を高めさせるとか。色々方法はあるかな」
正門の警戒感が高まれば、奇襲に対する警戒は薄くなる。
そうなると、作戦の成功確率も高くなるか。
「一度クラン様に連絡をした方が良さそうだな。具体的な作戦はクラン様から、本隊の情報を聞いて決めよう」
ルメイルはそう言って、書状を書きクランに送った。
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