第123話 苦戦
「スターツ城の様子を掴んできたので、報告します」
シャドーが掴んだ情報を報告してきたのはベンだった。
相変わらず覚えづらい地味な顔だが、流石に鑑定せずとも判別できるくらいにはなった。
「頼む」
「まずスターツ城ですが、まだ落とすことは出来ていないようです。かなり苦戦を強いられているようです」
苦戦しているのか。
数の上では勝っているが、堅い城であるためそう簡単に落とせないかもとは思っていたが、予想は的中していたか。
「やはりスターツ城は、かなり堅い城なのか」
「城が堅いというのもありますが、ベルツド城からの援軍としてやってきた兵たちに、かなりやられてしまっているようです。魔力水を貯めている施設を奇襲されて、その結果爆発の魔力水を多く失ってしまったことが、苦戦の大きな一因になっているようです」
それは厳しいな。
爆発の魔力水は、城を崩すには必須と言える攻城兵器だろう。
元々魔法が効きにくい城というだけに、それを多数失った状態で戦をするのは、非常に厳しい状態と言える。
これは思ったより、まずい状態かもしれない。
「今はどうしてるんだ? 爆発の魔力水を届けさせているのか?」
「ええ、ですが、届くころには本格的に冬になって、戦の続行が難しくなる可能性もありますが」
現在六月に入っており、流石に肌寒い季節となってきた。
確かに早々に戦を終わらせなければ、冬入りしてしまう。
すでにスターツ城の近くに陣は取っているだろうから、戦自体が出来なくなるというわけではないかもしれない。
ただ雪が降り積もると、兵糧や資源などが運び辛くなるので、そう言う意味では戦えないだろう。
六月の下旬辺りから、七月の上旬までが一番寒い時期で、それを乗り越えれば雪も解け始めて戦えるようになるだろう。
それほど長い期間ではないのだが、それでも一日でも早く戦を終わらせた方がいい現状だと、二十日くらい何も出来なくなる可能性があるのは、喜ばしい事態とは言えないだろう。
「情報ご苦労だった」
私はベンにお礼を言ったあと、貰った情報をルメイルに伝えた。
ルメイルは渋い表情をして、感想を漏らす。
「何と……そこまで状況が良くないとは……我らに出来ることは何かあるだろうか?」
「援軍に行くべきですね。このロルト城にもいくつか爆発の魔力水の貯蓄がありますし。足りるかは分かりませんが」
「クラン様を援助すべきというのは間違いない。問題はその方法だが」
「方法ですか?」
普通に駆けつける以外、ほかに方法があるのだろうか?
「普通に駆けつけるという方法以外に、別方向から敵を攻撃して虚を突くという作戦もある。防御魔法にはどこか手薄な場所があって、奇襲気味にそこを攻められると弱いという特徴があるからな。ロルト城からスターツ城へ行くのは二つの道があり、一つは我々が行軍してきた道とは別に、小さめの道がある。ここを通って奇襲を仕掛ければ、上手くいくかもしれない」
敵がロルト城陥落を知っていた場合は、守りを固められている可能性もあるが、それでも奇襲気味に行った方が効果的な攻撃が出来そうではあるな。
「奇襲した方がいいと思いますが……みんなで話し合って決めたほうがいいと思いますね」
「それは私も同意見だ。決めるのはなるべく早い方がいい。お主の優秀な家臣たちをすぐに集結させてくれ」
「かしこまりました」
私は家臣たちを呼び、軍議を開始した。
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